働き方改革関連法とは
なぜ働き方改革関連法に至ったのか
今の日本は、 歯止めのかからない少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少 に直面しています。国を支える働き手が減少することにより、国益として衰退していくことが予想されます。労働人口の減少というのは、経済成長の停滞につながる為に国としては、より多くの人に働いてもらい労働人口増加を目指していますが、現実には 「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況対応に迫られています。そこで、労働人口を増やしつつも少ない労働人口でもなんとかしていく必要があるのです。
以下は、内閣府の平成25年版 高齢社会白書(全体版)からの引用
将来推計人口でみる50年後の日本
将来推計人口とは、全国の将来の出生、死亡及び国際人口移動について仮定を設け、これらに基づいて我が国の将来の人口規模並びに年齢構成等の人口構造の推移について推計したものである。以下、平成24(2012)年1月に国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の将来推計人口」における出生中位・死亡中位推計結果(以下、本節においてはすべてこの仮定に基づく推計結果)を概観する。
ア 9,000万人を割り込む総人口
我が国の総人口は、今後、長期の人口減少過程に入り、平成38(2026)年に人口1億2,000万人を下回った後も減少を続け、60(2048)年には1億人を割って9,913万人となり、72(2060)年には8,674万人になると推計されている(図1-1-3)。
イ 2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上
一方で、高齢者人口は今後、「団塊の世代」が65歳以上となる平成27(2015)年には3,395万人となり、「団塊の世代」が75歳以上となる37(2025)年には3,657万人に達すると見込まれている。その後も高齢者人口は増加を続け、54(2042)年に3,878万人でピークを迎え、その後は減少に転じると推計されている。
これらの課題解決のため、日本政府は働く人の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、1人ひとりが健康でよりよい将来の展望を持てるようにすることを目指し、2019年4月1日から順次、働き方改革関連法を施行します。
働き方改革関連法とは
正式名は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」です。細かく言うと日本法における8本の の労働法の改正を行うための法律の通称であり 2019年4月1日から施行になりました。
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
- 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
- じん肺法
- 雇用対策法
- 労働契約法
- 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
働き方改革は大きく3本の柱から成り立っている
- 第1の柱:働き方改革の総合的かつ継続的な推進(雇用対策法改正)
- 第2の柱:長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等(労働基準法等改正)
- 時間外労働の上限規制の導入
- 長時間労働抑制策・年次有給休暇取得の一部義務化
- フレックスタイム制の見直し
- 企画型裁量労働制の対象業務の追加
- 高度プロフェッショナル制度の創設
- 勤務間インターバル制度の普及促進(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法改正)
- 産業医・産業保健機能の強化(労働安全衛生法・じん肺法改正)
- 第3の柱:雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
- 不合理な待遇差を解消するための規定(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)・労働契約法改正)
- 派遣先との均等・均衡待遇方式か労使協定方式かを選択(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)の改正)
- 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
- 行政による履行確保措置と裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備
簡単にまとめると
- 生産年齢に該当する人はもちろん、高年齢者も含め、意欲のある人が幅広く労働力として活躍できる体制を作る
- 限られた人員でも成果を出せる様、業務効率化や労働生産性の向上を実現する
働き方改革関連法の改正内容の具体的ポイントは以下の通り
ポイント1
時間外労働の上限規制の導入
時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、
臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定する必要がある。
ポイント2
年次有給休暇の確実な取得
使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者に対し、
毎年5日、時季を指定して有給休暇を与える必要がある。
ポイント3
正規・非正規雇用労働者間の不合理な待遇差の禁止
同一企業内において正規雇用労働者と非正規雇用労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)の間で、基本給や賞与などの個々の待遇ごとに不合理な待遇差が禁止される。
働き方改革関連法の改正内容をまとめると働き方改革関連法に関して、対象企業は「大企業」と「中小企業」に分かれる。 違いは、開始時期が大企業が2019年4月~となっており、中小企業は2020年4月~とされているだけで、大筋は一緒です。
美容室・働き方改革関連法
まだ一部の美容室では他人事のように思っている美容室もあります。しかし、昨今はそんなに甘くありません。社会全体が許さないのです。対応していかないと罰則の対象にも勿論なるが、それ以上に客商売をしている美容室は直接お客様と顔を合わすわけですから、お客様にその状況が伝わりそんな美容室は、社会から除外されていくことは必至となりえます。また、そんな美容室でいつまでも働いてくれるスタッフはいないと考えるべきだと思います。
美容室に於いて・真っ先にやらなければならない働き方改革関連法
①労働時間の対応
労働基準法では、労働時間は原則1日8時間、1週40時間まで(美容室や飲食店などの特例措置対象事業場は1週44時間)と定められています。この法定労働時間を超えて労働をさせた場合は時間外労働となり、通常の時給×1.25倍の残業代を支払う必要があります。
最も気をつけておかなければならないのが、時間外労働の上限です。働き方改革関連法の施行で、これまで三六協定を結んでいれば事実上、上限なく許容されていた時間外労働に上限が設けられることになりました。 2019年4月からは時間外労働は年間720時間、複数月平均80時間、単月100時間の時間外労働を超えれば、いかなる理由があったとしても労働基準法違反となります。
②有給休暇の対応
年次有給休暇が10日以上与えられる労働者――つまり、全労働日の8割以上出勤している労働者はパートタイマーやアルバイトであっても取得させる必要があります。義務化されたのは、年10日以上の有給が付与される労働者で、1年以内に最低でも5日間は取得させる必要があります。 基本的に有給の取得は従業員からの申し出による必要がありますが、従業員が1年取得申請を行わない場合は事業主が強制的に有給を取得させる必要があります。もし仮に取得させなかったり、通常の出勤日を有給休暇として扱ったりするようなことをすれば、労働基準法違反となり、懲役・罰則のいずれかもしくはその併科が課せられます。罰金の場合 1人につき、30万円の罰金があります。会社単位ではありません。
③社会保険加入の対応
社会保険制度は、健康保険、年金、雇用保険、労災保険をさします。この中で、雇用保険と労災保険を一般的に「労働保険」と呼び、健康保険と年金を「社会保険」と呼びます。
法人美容室は原則として、全従業員(役員全員・スタッフ全員)が『健康保険』『厚生年金』『雇用保険』『労災保険』の加入義務があります。「役員だけ・スタイリストだけ」社会保険に入っているなど”一部加入”の美容室などは悪質とみなされ、全従業員の保険料を過去2年分さかのぼり、徴収される事があります、その場合一括で払えない時は更に年利14.6%の利率が掛けられ、美容室運営もままならなくなってしまいます。また、働くスタッフの老後を考えた場合、どうしても年金が必要になります。国民年金だけの加入では、老後は生活ができません。どうしても厚生年金が必要なのです。
④最低賃金の対応・時間外労働の割増賃金の引き上げ
大企業ではすでに導入されているものですが、2023年以降は月60時間を越える時間外労働に対しては、基本給の1.5倍の割増賃金を支払う必要があります。これまで中小企業は一律1.25倍の賃金で時間外労働をさせることが可能でしたが、この割増賃金率が引き上げられます。違反すれば当然残業代未払いとして労働基準法違反となりますので懲役刑・罰金刑もしくはその併科の対象となります。
また、最低賃金は都道府県によって 異なり、 毎年度見直しも行われます。 その為、最低賃金を確認する必要があり、それによって、時間外労働の割増賃金も変わります。
残業代が発生する例
- 所定の就業時間を超えて労働している場合
- 1日8時間を超えて労働している場合
- 1週間で40時間を超えて労働している場合 (美容室や飲食店などの特例措置対象事業場は1週44時間)
- 午後10時から午前5時までの深夜時間帯に労働している場合
- 休日に労働している場合
美容室にとっては厳しい現実
しかし、これらを実際に行うとなれば、大半の美容室は経営が困難になることは必至。しかし、実施しないと社会から除外されるか、スタッフが去ってしまうかという結果になってしまうことも必至であります。この問題は、簡単に対応できる問題ではなく、きちんとした事業計画書を作成し、しっかりした数字の上で対応策を練る必要があります。とても厳しいことは事実でありますが、必ず方法はあるはずです。
出来ないと言っていないで、すべてを行った場合のシュミレーションを一度してみることから始めるとどこが問題か明確に出てきます。それに対して、どうすればやれるのかを考えてみると意外と対応策が出てくるものです。様々なコンサルタントが、いろいろ仰りますが結果的にはワンパターンの方法で対応できる問題点ではないのです。自身でまずは シュミレーション してみることです。
仮にお一人様サロンであっても最終的には、その方も年齢を重ねますので、いつかは自分に跳ね返ります。お一人様サロンだからと言っても決して安心できることではありません。
美容業で成功するには、通り抜けなければならない登竜門ですし、雇用しているスタッフの将来も左右することですので、何としても克服しなければならないことであります。
働き方改革関連法&助成金
働き方改革関連法に関連する助成金一覧
働き方改革は、日本の企業の低い労働生産性の是正や固定概念化された労働に対する考え方にメスを入れ、多様な労働形態に国全体として適合していこうと随時改革が進められています。
しかし、この改革を進めるためにはどうしても直接の雇用主である事業主に動いてもらうことが必要です。このため、政府は働き方改革を促進するために助成金制度を設けています。また助成金には、厚生労働省から支給されるものと自治体から支給されるものがあります。頂いた助成金は返済がないことが基本ですので、利用できるものは、利用していくべきだと思います。利用可能なものをピックアップしましたので、参考にして頂ければと思います。
キャリアアップ助成金
対象地域=全国 対象=全業種
配偶者出産休暇奨励金
対象地域=東京都 対象=中小企業
時間外労働等改善助成金
対象地域=全国 対象=中小企業
業務改善助成金
対象地域=全国 対象=中小企業
両立支援等助成金
対象地域=全国
職場意識改善助成金
対象地域=全国 対象=中小企業
※上記は行政のサイトなので、頻繁に変わることがある為リンク切れや違うものが掲載されてしまうことがありますが、ご了承ください。