
2026年、美容室のあり方は大きな転換期を迎えています。 法改正と聞くと「規制が厳しくなる」とネガティブに捉えがちですが、見方を変えれば「業界全体がよりホワイトで、プロフェッショナルな働き方へと進化している」とも言えます。2024年11月1日から施行された「フリーランス新法」の浸透や、社会保険適用の拡大など、最新の法改正・施行状況を正しく理解することは、これからのサロン経営における「武器」になります。時代に取り残されないために、そして、より自由で健全なサロンワークを実現するために。2026年にアップデートされた法規制の重要ポイントを紐解いていきましょう。
- 1 2026年4月新年度に向けて確認!
- 2 フリーランス美容師を守る「労働災害防止対策」とサロンの義務
- 3 なぜ「フリーランス」の安全対策が必要なのか?
- 4 サロンが具体的にやるべき3つの対策
- 5 「労災保険の特別加入」の確認
- 6 今後対応が必要になる3つの安全衛生対策
- 7 美容室に関連する「労働基準法等」改正・検討ポイント
- 8 今後、可能性のある労働基準「改定案」
- 9 美容室での「女性活躍推進法」
- 10 ■プラチナえるぼし認定とは
- 11 ■フリーランス新法(2024年11月施行)の影響と対策
- 12 ■育児・介護休業法の改正(2025年4月~順次施行)のポイント
- 13 ■社会保険の適用拡大(106万円の壁・130万円の壁)とパートスタッフの働き方
- 14 ■相続登記の義務化と店舗兼住宅のオーナーが抱えるリスク
- 15 ■マイナンバーカードと保険証の一体化と入退社手続きのデジタル化
2026年4月新年度に向けて確認!
フリーランス美容師を守る「労働災害防止対策」とサロンの義務

2026年(令和8年)4月、新年度がスタートします。 美容業界では、スタイリストの独立支援や柔軟な働き方として「業務委託(フリーランス)」契約がすっかり定着しました。しかし、オーナーの皆様は、フリーランス美容師に対する「安全衛生管理」が、法律(労働安全衛生法)によって厳格に義務付けられていることを正しく運用できていますでしょうか?
実は、2025年4月の法改正により、「同じ場所で働くなら、雇用・フリーランス問わず、場所を管理する者(サロン側)が安全措置を講じなければならない」というルールが始まっています。
2026年4月は、このルールが形式だけでなく「実務」として問われるタイミングです。万が一の事故が起きた際、「知らなかった」では済まされません。今回は、改めてサロンが取り組むべき「フリーランスの労災防止対策」について解説します。
なぜ「フリーランス」の安全対策が必要なのか?
これまで、労働安全衛生法は「労働者(雇用されている人)」を守るための法律でした。そのため、業務委託のスタイリストは「個人事業主」として自己責任とされる傾向がありました。しかし、実態はサロンという「同じ場所」で、「同じ設備」を使って働いています。 そこで国は、「場所を管理している注文者(サロンオーナー)」に対し、その場所で働くすべての人(フリーランス含む)の危険防止措置を義務化しました。
サロンが具体的にやるべき3つの対策
2026年現在、サロン側には以下の具体的な措置が求められています。
設備・作業環境の安全確保
スタイリストが使用するセット面、シャンプー台、ワゴンなどの設備に不備はありませんか?
・シャンプー台の水漏れ・故障: 滑って転倒するリスクの排除
・電気機器の配線: ドライヤーやデジパ機器のコード断線による感電・火災防止 これらは「貸しているだけだから」ではなく、サロン側がメンテナンスし、危険がない状態にする必要があります。
化学物質(薬剤)のリスク管理
カラー剤やパーマ液など、化学物質による肌荒れやアレルギー、吸入リスクへの対策です。 特に2024年以降、化学物質管理のルールは段階的に強化されています。
・フリーランス美容師に対しても、取り扱う薬剤の危険性(SDSなど)を周知する。
・換気設備の稼働状況を確認する。
・保護手袋やマスクの使用を推奨・提供する。
事故発生時の対応と周知
万が一、サロン内でフリーランス美容師が怪我をした場合、サロン側はどう対応するかを決めておく必要があります。また、サロン内で火災や地震が起きた際の避難経路についても、雇用スタッフ同様に周知・訓練への参加を促す必要があります。
「労災保険の特別加入」の確認
フリーランスは原則として通常の労災保険に入れませんが、美容師は「労災保険の特別加入」が可能な職種です。 これはフリーランス自身が加入するものですが、サロン側として以下の働きかけが推奨されます。
・未加入の場合は、万が一に備えて加入を勧める。
・契約時に「特別加入」への加入状況を確認する。

サロン内で事故が起きた際、適切な補償があるかどうかは、トラブルを未然に防ぐ大きなポイントになります。2026年4月、法改正から1年が経過し、行政のチェックも「周知期間」から「指導期間」へと移行していくと考えられます。「うちは業務委託だから関係ない」という考え方は、今の法律では通用しません。 スタッフ全員が、雇用形態に関わらず安全に、安心してパフォーマンスを発揮できる環境を整えること。それが、選ばれるサロンであり続けるための最低条件とされています。
今後対応が必要になる3つの安全衛生対策
① メンタルヘルスの強化(50人未満事業場のストレスチェック強化)
2025年5月の法改正により、これまで従業員50人以上の事業場に限られていた「ストレスチェック」が、50人未満の小規模事業場でも義務化される見通しです(2028年施行予定)。小規模経営が大半を占める美容室も対象となります。接客による感情労働や技術習得のプレッシャーでメンタル不調を抱えやすい業界だからこそ、施行直前に慌てないよう、相談窓口の設置や定期面談など「心の健康」を守る準備を始めましょう。
② 熱中症対策が義務化
気候変動に伴い労働安全衛生規則等が改正され、事業者の「熱中症対策」が明確に義務化されています。美容室は屋内ですが、ドライヤーの熱気やシャンプー台の湿気、クロス着用時の体感温度上昇など、意外にもリスクが高い環境です。「忙しくて水を飲む暇がない」状態を放置すれば安全配慮義務違反になりかねません。空調の適切な管理はもちろん、施術の合間にスタッフが水分・塩分を必ず補給できる時間を確保するなど、運用ルールの徹底が不可欠です。
③ 高齢労働者の安全衛生対策強化が努力義務
「エイジフレンドリーガイドライン」に基づき、高齢スタッフが働く環境の整備が「努力義務」として強化されています。美容師の現役期間が伸びる中、加齢による身体機能の低下は避けられません。特に濡れた床や落ちた髪の毛による「転倒」は、高齢になるほど骨折などの重症事故に繋がります。滑りにくい床材への変更や手元が見えやすい照明の確保、無理のない予約枠の調整など、生涯現役を支えるバリアフリーな職場づくりが求められます。
美容室に関連する「労働基準法等」改正・検討ポイント

■ 給与のデジタル払い解禁(デジタル給与)
・銀行振込だけでなく、「PayPay」や「d払い」などのスマホ決済アプリへの給与振り込みが可能に(※労使協定と本人の同意が必要)。
・若いスタッフのニーズに対応できる一方、サロン側の事務手続きの対応が求められます。
■「勤務間インターバル制度」の導入促進
・「終業時刻」から「翌日の始業時刻」までに一定の休息時間(11時間など)を空ける制度。
・現在は「努力義務」ですが、過労死防止の観点から将来的な義務化も議論されています。
美容室への影響: 深夜の練習会や、遅番翌日の早番シフト等の見直しが必要になる可能性があります。
■ 労働条件通知書の「明示ルール」変更
・雇用契約を結ぶ際、「将来的に業務内容や勤務地がどう変わる可能性があるか(変更の範囲)」まで明記することが義務化されています。
美容室への影響: 「入社時はアシスタントだが、将来は店舗異動やレセプション業務への変更もあり得る」など、契約書への具体的な記載が必要です。
■ 副業・兼業の労働時間管理
・スタッフが副業をしている場合、本業(サロン)と副業先の労働時間を「通算」して管理するルール。
美容室への影響: フリーランスと雇用のハイブリッドや、掛け持ちバイトをしているスタッフの割増賃金(残業代)計算に注意が必要です。
■ 年次有給休暇の取得促進(継続)
「年5日の取得義務」に加え、時間単位での有給取得(時間休)の導入など、より柔軟な運用が推奨されています。
美容室への影響: 予約の空き時間を活用した「1時間単位の有給」などが、離職防止策として注目されています。
特に「勤務間インターバル」は、練習時間が長い美容業界にとって今後大きな課題となる可能性があります。今のうちから「営業時間外の拘束時間」を減らす仕組みづくりが大切です。
今後、可能性のある労働基準「改定案」

以下は、今後の労働法制審議会(労政審)などの議論において、美容業界(特に小規模サロン)にとって経営の根幹に関わる非常に大きな改正ポイントです。
今後検討されている「労働時間・休日」に関する重要改正案
■ 連続勤務の上限規制(「14日連続勤務」等の禁止)
1.内容: これまでは法定休日の配置(週の初めと終わりなど)を工夫すれば、最大12〜13日程度の連続勤務が可能でしたが、健康確保の観点から「連続勤務できる日数」に上限(例:14日以上は禁止など)を設ける案です。
美容室への影響: 12月の繁忙期や、スタッフの長期休暇前後にシフトを詰め込んで対応している場合、シフト作成のルール自体を見直す必要が出てきます。
■ 法定休日の「明確な特定」義務化
2.内容: 現行法では「週1回(または4週4回)」の休みがあれば良いとされていますが、割増賃金率が高い(1.35倍)「法定休日」がどの日なのか、就業規則等で特定(曜日や日付を確定)することを義務化する動きです。
美容室への影響: 火曜定休のサロンは分かりやすいですが、シフト制の場合、「この公休は法定休日(働いたら1.35倍)、この公休は法定外休日(働いたら1.25倍)」という区分けをこれまで以上に厳格に管理する必要があります。
■ 有給休暇の賃金算定方法の統一
3.内容: 現在、有給取得時の賃金は「①平均賃金(過去3ヶ月分)」「②所定労働時間働いた場合の賃金」「③健康保険の標準報酬日額」の3つから選べますが、事務負担軽減等のため、「②所定労働時間働いた場合の通常の賃金」などに統一する改正案です。
美容室への影響: 給与計算がシンプルになるメリットがある反面、歩合給(コミッション)メインのスタイリストの場合、「通常の賃金」をどう定義するか(基本給のみにするのか等)で、支給額が変動する可能性があります。
■ 週44時間特例措置の廃止(10人未満の事業場)
内容: 商業や理美容業など、常時10人未満の事業場に認められている「週44時間労働」の特例を廃止し、全業種「週40時間」へ統一する議論です。
美容室への影響: 最もインパクトが大きい改正案です。小規模サロンでも週40時間を超えた分(4時間分)はすべて「残業代」の支払いが必要になるか、営業時間を短縮するかの経営判断を迫られます。
特に「4. 週44時間特例の廃止」は、小規模サロンにとっては人件費に直結する死活問題です。 「特に10人未満のサロンオーナー様は、『週44時間特例の廃止』の議論に注目してください。これが施行されると、今と同じ営業時間・シフトでは残業代コストが跳ね上がる可能性があります」
ここまでの「改定案・改正・検討ポイント」を具体的に全て法改正された場合、現状の美容室ではほとんど雇用は出来ず、多くのサロンが閉店に追い込まれる危機感があります。因みに働き方改革関連法後、2024年・2025年と美容室の倒産件数は過去最高数を更新し続けています。これらをクリアするためには、今の美容室業界客単価では、無理があります。いくら法律が国民にとって良い改定であっても働く場がなくなってしまっては、本末転倒と言わざるを得ません。さらに開業を目指す人も個人店レベルに収まってしまう傾向が強くなってしまい、美容師を目指す人も減少し、業界的にはチカラを失っていく様に思えます。私の間違えであればよいと願うばかりです。

余談ですが、それに近い試算をした経緯があります。下記を参考にして見て下さい。因みに2026年2月の衆議院選挙の公約に最低賃金1,700円と言っている党もありますが、ちゃんと考えて言っているのか疑問を持ちます。概略ですが、美容室の最低賃金(新人)の方の採算分岐点売上は、ひとり75万円~85万円ぐらいになるかと思います。業界を分かっている方なら、この数字(新人)がいかに難しいかを理解できるかと思います。
美容室での「女性活躍推進法」

■女性活躍推進法の改正ポイントと美容室への影響
2026年4月の改正・施行における美容業界の大きなトピックは、これまで「301人以上の大企業」だけが対象だった「情報公表義務」が、「101人以上の中小企業」にも拡大される点です。
従業員数が100名を超える中堅規模のサロンチェーンにとって、採用やブランディングに直結する非常に大きな変化となります。
主な改正ポイント(対象企業の拡大)
従業員数101人~300人の企業に対し、新たに以下の2項目の情報公表が義務化されます。 (これまでは301人以上のみ義務、300人以下は努力義務でした)
・「男女間の賃金差異(賃金格差)」の公表 男性の平均賃金を100とした場合、女性の賃金がどのくらいか(例:75.5%)を計算し、Webサイト等で公表しなければなりません。「全労働者」「正規雇用」「非正規雇用」の3区分での公表が必要です。
・「女性管理職比率」の公表 店長やマネージャーなどの管理職に占める女性の割合を公表する義務が生じます。
美容室への具体的な影響
美容業界は女性比率が高い業界ですが、今回の改正は以下の点で経営にインパクトを与えます。
・「数字」が採用ブランディングを左右する 美容学生や求職者は、サロン選びの際に「働きやすさ」を重視します。厚生労働省のデータベースや自社サイトで数値が可視化されるため、「女性スタッフは多いが、幹部は男性ばかり」「パート女性が多いので平均賃金の数字が低い」といった実態が数字で分かってしまいます。 数字が良いサロンは「女性が稼げる・キャリアアップできる」という強力な採用武器になりますが、逆に数字が悪い場合は、「なぜ差があるのか(短時間勤務者が多いため等)」という説明責任を果たす準備が必要です。
・事務負担の増加と給与制度の見直し 101人以上のサロンでは、毎年賃金データを集計し公表する事務作業が発生します。4月の施行に向け、給与計算システムの設定確認や、男性スタイリストと女性スタイリストで基本給や歩合率に不合理な差がないか、総点検が必要です。
対策まとめ
今回の改正は、単なる事務作業の増加ではなく、「女性美容師が長く、高く稼げるキャリアパスを作れているか?」を突きつけられるものです。
特に101名以上のサロン様は、まず「現状の賃金格差のシミュレーション」を行ってみて下さい。もし格差が大きい場合でも、「時短勤務のママさん美容師が多く在籍しているため」など、ポジティブな要因であれば、それを補足説明として記載する準備を今のうちに進めておくことをおすすめします。
■プラチナえるぼし認定とは
女性活躍推進法に基づき、厚生労働大臣が優良な企業を認定する制度が「えるぼし認定」です。その中でも、特に極めて優れた取り組みを行っている企業に与えられる最高位の認定が「プラチナえるぼし認定」です。通常の「えるぼし認定」は取り組みの達成度合いに応じて3段階ありますが、プラチナはそのさらに上の特級ランクという位置づけです。
認定されるための条件
プラチナえるぼしを取得するには、まず「えるぼし認定(2段階目または3段階目)」を取得していることが前提となります。その上で、さらに厳しい以下の基準などを満たす必要があります。
・策定した「一般事業主行動計画」の目標を達成していること。
・男女雇用管理における5つの評価項目(採用、継続就業、労働時間、管理職比率、多様なキャリアコース)のすべてを満たしていること。
・女性の定着率が男性より高い、あるいは管理職比率が産業平均の1.5倍以上であるなど、実績が数値として表れていること。
つまり、「計画を立てただけでなく、実際に女性が辞めずに活躍し、結果を出している企業」だけが選ばれます。
美容室が取得するメリット
美容業界において、この認定を取得することは非常に大きなアドバンテージになります。
・圧倒的な採用ブランディング 「美容師はハードワークで長く続けにくい」というイメージがある中、プラチナ認定があるサロンは「女性が結婚・出産を経ても働き続けられるホワイトな職場」という国のお墨付きを得たことになります。優秀な女性スタッフや新卒生の採用において、他店と明確な差別化ができます。
・社会的信用の向上と優遇措置 認定マーク(プラチナえるぼしマーク)を求人広告や名刺に使用できるほか、公共調達での加点や、日本政策金融公庫からの低利融資などの優遇措置を受けられる場合があります。
プラチナえるぼしは、単に制度を整えるだけでなく、実際に「女性が長く輝き続けている実績」が必要なため、ハードルは高いです。しかし、女性比率が高い美容業界だからこそ、目指す価値のある最高峰のステータスと言えます。
■フリーランス新法(2024年11月施行)の影響と対策

2024年11月に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法(通称:フリーランス新法)」は、施行から1年以上が経過し、美容業界でも完全に定着のフェーズに入りました。
かつては「面貸し」や「業務委託」といえば、口約束や簡単なメモ書きだけで契約が進むことも少なくありませんでしたが、現在は明確なルール違反となります。2026年の今、改めてサロン側が徹底すべきポイントは以下の3点です。
1.取引条件の「明示」義務(口約束の禁止)
業務を委託する際、報酬額、支払日、業務内容などの条件を、書面またはデータ(メールやSNSのメッセージ等も可)で直ちに明示することが義務付けられています。 「報酬は売上の〇%で、あとは今まで通りで」といった曖昧な発注はトラブルの元です。特に、後から「材料費を差し引く・引かない」などで揉めた際、明示された記録がないとサロン側が不利になるケースが増えています。
2.報酬支払期日の「60日以内」ルール
フリーランス美容師が業務(施術)を完了した日から「60日以内」に報酬を支払わなければなりません。 締め日によっては支払サイトが長くなりがちですが、法律の上限を超えていないか、経理フローを再確認してください。
3.トラブル防止とハラスメント対策
「来月から来なくていい」といった一方的な契約解除は、原則として30日前までの予告が必要です(継続的取引の場合)。また、サロンオーナー(発注者)には、フリーランスに対するハラスメント対策体制の整備も義務化されています。「外部の人だから」という態度は許されず、相談窓口の設置などの対応が求められます。
この法律は、立場の弱いフリーランスを守るためのものですが、裏を返せば、サロン側がルールを守ってさえいれば、不当な要求や言いがかりからサロンを守る武器にもなります。お互いがプロとして対等な関係を築くために、契約周りのクリーン化は必須条件です。
■育児・介護休業法の改正(2025年4月~順次施行)のポイント

美容業界における「働き方改革」の本丸とも言えるのが、2025年4月から順次施行されている育児・介護休業法の改正です。
これまでは「子どもが3歳になるまで」が主な支援期間でしたが、今回の改正で「小学校入学前まで」へとサポート期間が大幅に延長されました。子育て中のスタッフが多いサロンにとって、シフト管理や制度設計の見直しは必須です。
1.「3歳~小学校入学前」の柔軟な働き方が義務化
3歳から小学校就学前の子どもを育てるスタッフに対し、サロン側は以下の「柔軟な働き方」を選択肢として用意する義務があります。
・始業時刻等の変更(時差出勤) ・短時間勤務制度 ・新たな休暇の付与 ・(事務職などの場合)テレワーク等
美容室の現場では、「保育園の送り迎えに合わせて10時出社・17時退社を認める」「土日どちらかの休みを固定する」といった運用が現実的な対応となります。これらを制度として就業規則に明記し、スタッフが選びやすい環境を作らなければなりません。
2.「残業免除」の対象期間が延長
これまで3歳未満の子どもを育てるスタッフが対象だった「所定外労働の制限(残業免除)」の請求期間が、「小学校就学前」まで延長されています。 つまり、小学校に入るまでは「練習会やミーティングで残業させることは原則できない」という前提で、人員配置や教育カリキュラムを組む必要があります。
3.男性の育休取得促進
「男性美容師も育休を取るのが当たり前」の時代になりました。 改正法では、妊娠・出産の申し出をしたスタッフ(男女問わず)に対し、個別に育休制度の周知や意向確認を行うことが義務化されています。 「忙しいから無理だよね?」といった雰囲気を作るのではなく、男性スタッフが気兼ねなく育休を取得し、復帰できるキャリアプランを提示することが、離職防止や優秀な人材確保に直結します。
この法改正は、単なる規制強化ではなく、「結婚・出産しても美容師を続けられる業界」へと進化するための道しるべです。長く活躍してくれるスタッフを守るために、今一度サロンのルールを確認しましょう。
■社会保険の適用拡大(106万円の壁・130万円の壁)とパートスタッフの働き方

2024年10月以降、従業員数「51人以上」の企業で働くパート・アルバイトへの社会保険適用が拡大されました。2026年現在、このルールは完全に定着していますが、スタッフの働き方に大きな影響を与え続けています。
いわゆる「年収の壁」問題は、パートタイムで働くアシスタントやレセプション、ママさんスタイリストを抱えるサロンにとって避けて通れない課題です。
1.「51人以上」のサロンは「106万円の壁」が基準
従業員数が51人以上の規模のサロン(法人)では、以下の条件を満たすスタッフは社会保険(厚生年金・健康保険)への加入が義務となっています。
・週の所定労働時間が20時間以上 ・月額賃金が8.8万円以上(年収約106万円以上) ・学生ではない
これを超えると保険料が天引きされ手取り額が減るため、「扶養内で働きたいからシフトを減らしてほしい」という要望が出る一方、サロンとしては人手不足の中で稼働時間が減るのは痛手です。
2.小規模サロンも無関係ではない(制度の更なる拡大)
従業員数50人以下のサロンでは、現在はまだ「130万円の壁(扶養から外れるライン)」が基準ですが、政府は企業規模の要件を撤廃し、すべての事業所を対象にする方向で議論を進めています。 2026年時点ではまだ対象外であっても、「将来的にすべてのパートスタッフが社会保険加入対象になる」という前提で経営計画を立てる必要があります。
3.「壁」を意識させないキャリアプランの提案を
手取りが減ることを避けるために労働時間を調整する「働き控え」は、スタッフのキャリアにとっても、サロンの生産性にとってもマイナスになりかねません。 最近では、国からの助成金(キャリアアップ助成金など)を活用して社会保険料負担分を補填したり、時給アップを行ったりして、「壁を越えてしっかり働き、将来の保障を厚くする」という選択を促すサロンが増えています。
パートスタッフ一人ひとりと面談し、「扶養内で抑えるか」「自立してフルタイムに近づけるか」、ライフステージに合わせた働き方を再設計する時期に来ています。
■相続登記の義務化と店舗兼住宅のオーナーが抱えるリスク

労務管理とは少し毛色が異なりますが、店舗兼住宅や自社ビルを所有しているオーナー様にとって、経営の根幹に関わる重要な法改正が「相続登記の義務化」です。
2024年4月1日から施行されていますが、2026年の今、改めて確認が必要なのは「過去の相続も対象であり、猶予期間のカウントダウンが進んでいる」という点です。
1.「過去の相続」もさかのぼって義務化対象
「親から店を継いだが、建物や土地の名義は亡くなった父親のままにしている」 こうしたケースは、美容業界でも珍しくありません。しかし、改正法により、不動産を取得した相続人は、その取得を知った日から3年以内に登記申請をすることが義務付けられました。
最も注意すべきは、法改正(2024年4月)以前に発生していた相続についても、さかのぼって適用される点です。放置していると「10万円以下の過料」の対象となる可能性があります。
2.サロン経営への実質的なデメリット
罰則以上に怖いのが、サロン経営への悪影響です。登記(名義変更)が正しく行われていない不動産は、対外的な信用が得られません。
・融資が受けられない 老朽化した店舗の改装やリニューアルのために銀行から融資を受けようとした際、担保となる土地・建物が自分(現在の経営者)の名義になっていなければ、融資審査が通りません。
・売却や処分ができない 将来的にサロンを移転したり、閉店して物件を売却したりしようとしても、相続人全員の遺産分割協議が整い、登記が完了していなければ売買契約を結ぶことができません。
3.まずは「登記簿」の確認を
「うちは大丈夫だろう」と思っていても、調べてみたら先代や先々代の名義のままだった、というケースは多々あります。 特に、代替わりをして数年が経つオーナー様は、一度法務局で登記簿謄本(全部事項証明書)を取得し、現在の名義が誰になっているかを確認することをおすすめします。権利関係が複雑になる前に、早めに司法書士等の専門家へ相談しましょう。
■マイナンバーカードと保険証の一体化と入退社手続きのデジタル化

2024年12月に従来の健康保険証の新規発行が終了してから時間が経過し、2026年の現在、医療機関の受診は「マイナ保険証(マイナンバーカード)」が基本となりました。
これに伴い、サロンにおけるスタッフの採用・入社手続き(社会保険の加入手続き)のフローも大きく変わっています。特に春の新卒採用シーズンに向け、事務担当者は以下の運用フローを再確認しておく必要があります。
1.入社時の「保険証受け渡し」が不要に
これまでは、入社手続き後にサロンに届いた保険証をスタッフ本人に手渡していましたが、マイナ保険証を利用するスタッフの場合、その物理的な受け渡しがなくなりました。 会社側で資格取得の手続きが完了すれば、スタッフ自身のマイナンバーカードでそのまま受診が可能になります。
ただし、これは「手続き完了の連絡」をサロン側がしっかり行わないと、スタッフが「いつから保険が有効なのか」分からず不安になるため、入社時のコミュニケーションがより重要になります。
2.カードを持たないスタッフへの「資格確認書」
マイナンバーカードを持っていない、あるいは保険証としての利用登録をしていないスタッフが入社した場合はどうすればよいでしょうか。 この場合、従来の保険証の代わりとなる「資格確認書」の発行を申請する必要があります。 「全員がマイナ保険証を持っているわけではない」という前提で、入社時にどちらのパターンで手続きを行うか、ヒアリングシート等で確認するフローを定着させましょう。
3.行政手続きの完全デジタル化へ
この一体化の流れに合わせ、社会保険や雇用保険の加入・脱退手続き(入退社手続き)についても、紙の書類ではなく「e-Gov(イーガブ)」などの電子申請が標準化されています。
役所や年金事務所へ出向く待ち時間がなくなるメリットは大きいですが、電子申請を行うためには法人用の共通認証システム「GビズID」の取得などが不可欠です。 まだ紙のアナログ手続きを中心に行っているサロン様は、2026年を機にバックオフィスの完全デジタル化へ踏み出すことを強くおすすめします。
マイナンバー(個人番号)は「特定個人情報」であり、その管理には従来の履歴書以上に厳格なセキュリティが求められます。管理体制の見直しも含め、デジタル時代に対応した労務管理へとアップデートしていきましょう。


