2029年の4年後、最低賃金1,500円になった場合、美容室での最低雇用費用はいくら?
美容室での最低雇用金額に該当する人の採算分岐点売上は?
2020年代に最低賃金1,500円
石破茂新政権の最低賃金を全国加重平均で1,500円に引き上げるという政府目標の達成時期を、従来の「2030年代半ば」から「2020年代」へと前倒しする方針。最も遅い2029年度に達成する場合でも、要求される2025~29年度の5年間引き上げ率は年平均7.3%と過去最高を上回ります。
2024年10月に全国の最低賃金(時給)が平均1,055円に引き上げられたが、政府はさらなる引き上げに躍起。これに対し、日本商工会議所の小林健会頭は「急激に最低賃金を上げると、廃業せざるを得ない中小企業が出てくる」と警戒。経団連の十倉雅和会長も「劇薬になる。乱暴な議論だ」と慎重な検討を要望した。一方、経済同友会の新浪剛史代表幹事は「2020年代中といわず、3年以内に達成してほしい。できない企業は市場から退場すべき」と主張する。経済団体の中でも意見が分かれた。
そして、その流れに人材確保の為にも移行していこうという大企業の考え方も強く、また世の中の動きでもありますが、日本の企業99.7%を占める中小企業にとってはとても大きな問題であります。美容業界も圧倒的に中小・零細企業が多く難問とされていますが、今の流れから判断すると1,500円と言う最低賃金に達しなくてもそれに近い金額が提示されることは間違いはないとみて良いかと思います。そこで、それに合わせた経営改善が必要となってくる訳ですが、まずは「2029年の4年後、最低賃金1,500円になった場合、美容室での最低雇用費用はいくら?」そして、「美容室での最低雇用金額に該当する人の採算分岐点売上は?」を認知する必要があります。
最低賃金1,500円から算出した雇用最低費用
まずは、最低賃金1,500円・社会保険(健康保険・厚生年金)・働き方改革による勤務時間規制・残業割増手当に基づいて、(尚、最低賃金には以下のものは含まれません。通勤手当・家族手当・精皆勤手当て・時間外・休日・深夜割増手当・固定残業手当・賞与・臨時手当) 最低賃金1,500円を基にした社員スタッフの雇用にかかる総コストの内訳を以下に示します。※ 就労時間 週40時間 1日8時間勤務 週5日間勤務/完全週休2日 (パート・アルバイトを含む従業員が10人未満の場合は週44時間まで、この勤務時間には休憩時間は含まれません。)
1. 基本給の計算
月給の計算
・時給: 1,500円
・月の労働時間 : 40時間/週 × 4.33週 月勤務時間 約 173.2時間
・月給: 1,500円 × 173.2時間 約 259,800円
年間基本給
・年間基本給: 259,800円 × 12ヶ月 約 3,117,600円
2. 社会保険料の計算
社会保険料は、会社と社員が折半で負担します。一般的には、給与の約15%〜16%が社会保険料として必要です。
・社会保険料(会社負担分):年間基本給の15%と仮定すると、3,117,600円 × 0.15 =467,640円
3. 福利厚生費
福利厚生費は、社員の生活向上や労働環境改善のために支出される費用です。一般的には、月給の5%〜10%程度が目安とされています。
福利厚生費: 259,800円 × 0.05 ≈ 12,990円(年間155,880円)
4. その他の費用
・教育訓練費: 新入社員の研修やスキルアップのための費用(仮に年間10万円とする)。
・退職金の積み立て: 退職金制度がある場合、年間で一定額を積み立てる必要があります(仮に年間25万円とする)。
5. 合計費用
これらの費用を合計すると、会社が負担する総額は以下のようになります。
年間総支出額
・基本給: 3,117,600円
・社会保険料: 467,640円
・福利厚生費: 155,880円
・教育訓練費: 100,000円
・退職金積立: 250,000円
総合計 : 4,091,120円 (最低賃金による人件費=雇用最低費用)
したがって、最低賃金1,500円で社員スタッフを雇用する場合、会社が負担する年間の総額は約4,091,120円となります。月額に計算すると340,927円となります。(尚、これらには、通勤手当・家族手当・精皆勤手当て・時間外・休日・深夜割増手当・固定残業手当・賞与・臨時手当など含まれていません)
最低賃金1,500円ベースにした「雇用最低費用(人件費)」
年間 4,091,120円 月額340,927円
美容室での最低雇用金額に該当する人の採算分岐点売上は?
美容室の場合、個人経営が多いのですが基本的な事は法人経営とわかりませんので、下記を参照してください。ネットなどで見ると人件費率平均30%~40%と表記されている資料を見ますが、「いつの話なの?」と疑問に持つ数字です。あてにならない数字では、何も事が進みませんので信憑性の高い「TKC全国会」様の数字を引用させて頂き、弊社も30数年前から美容室の記帳業務を行っておりますので、弊社データーも含め記載します。
BAST速報版 (令和6年7月決算~令和6年9月決算)
黒字企 業件数 | 黒字企 業割合(%) | 平均売上高 (千円) | 人件費 (千円) | 一人当たり売上高(千円) | 一人当たり人件費(千円) | 平均従事員数(人) |
---|---|---|---|---|---|---|
233 | 42.1 | 78,708 | 37,663 | 7,810 | 3,737 | 10.1 |
あくまで、黒字企業だけを対象にした数値データーであり、平均従事者数も10.1人と業界平均レベルよりはるかに高い数値でありますが、これを参照させて頂きます。
美容室「売上対人件費比率」 47.9% ※売上に対して占める人件費(法定福利費含む) の割合
美容室「売上対人件費比率」※売上に対して占める人件費(法定福利費含む) の割合が、50%以内であれば大筋、黒字企業ですのでこれを目安とします。
美容室「売上対人件費比率」内訳 ※参考資料 : 黒字:経営美容室(営業利益3%)の一般的な収益構造の一例
売上 100%
原価(材料費等) 10%・販売管理費計 87%・営業利益 3%
人件費(法定福利費含む) 50%
水道光熱費 3%
広告宣伝費 7%
通信費 2%
地代家賃 10%
その他経費 15%
黒字経営を前提に(売上対人件費比率 50%)試算して、
4,091,120円 (最低賃金による人件費=雇用最低費用)=売上50%に該当となる訳ですから、
美容室での最低雇用金額に該当する人の採算分岐点売上
年間8,182,240円(税抜)
月額にすると681,853円(税抜) / 750,038円(税込)
この数字が高い数字か、低い数字かは各サロンにおいて判断する事かとは思いますが、この数字は上記のTKC全国会様 黒字企業経営指標「一人当たり売上高」より高い数値となります。一般的な考え方になるかとは思いますが、この数値(最低賃金)が新年度に入社した新卒の採算分岐点売上とも判断できます。仮に新卒の方がこの数値に該当するとなれば、以前から勤務される方の賃金はこれより高いということになりますので、サロン全体の一人平均採算分岐点売上はもっと高くなるかと思います。
この5年間で大幅な値上げ変更が必要
物価が上がっているから、それに合わせて単純に「値上げ」という問題だけではありません。美容業界に限らず、働き方改革によって勤務時間の規制が厳しくなっており、就労時間 週40時間 1日8時間勤務 の規制があり、( パート・アルバイトを含む従業員が10人未満の場合は週44時間まで規制緩和)いくらお客様数を増やしても時間内で対応する人数には限りがあります。また、現行の従業員が10人未満の場合は週44時間まで規制緩和もいつ制限されるか分からない状況もあります。その様な状況では、出来ることとして、一人当たりのお客様対応時間の短縮や料金の単価上昇を図る事が必然的に求められてくるという事です。
現状、一人当たりのお客様対応時間を短縮するには限界もあり、予約制を導入するサロンが多いことから、予約客と次の予約客のインターバルには余裕を持たざる得ない部分がありますので、やはり価格に振り替えた「値上げ」手段が大半のサロンで起こってくることが想像できます。そうすると次に起きてくることとして、お客様の利用回数の減少や来店サイクルの延長が想像できることに繋がります。その為に美容室の集客に拍車がかかりやすいのですが、価格を安くしてしまう集客では単価の減少となり、結果的に本末転倒な結果となってしまいがちです。単価の高いメニューを中心に集客する方法もありますが、基本的に単価の高いメニューの場合、時間を要するメニューが多いために「勤務時間規制」により、対応客数が減少しこれも理にかなわない結果となりがちかと思うところがあります。やはり、値上げした正常な価格での集客を取らないと結果的に収益が上がらない形となり兼ねないかと思います。
弊社でおススメしている方法
より価格が上がった美容技術料金によって、従来より美容室へ行く回数が減ったことも含め、お客様はより厳選してサロンを選ぶ方向に進むかと思います。価格以外であれば、パーマを掛ける際は、より優れたパーマサロンへ、カットをするならより優れたカットのうまいカットサロンへ、カラーも同様により優れたカラーサロンへ、となるかと思います。
例えば、スイーツなどでも話題評価の高いお店にお客様が多く流れます。仮に1,000円のスイーツのお店より1,500円するけど美味しいと評判のお店にはお客様は集中します。毎日食する訳でないので、どうせ行くなら美味しいお店に足を運ぶといった「特化」したお店選びをしています。
美容室も同様で、従来より使用回数が減った分、どうせなら、より「特化」したサロン選びをするはずです。その為に自店で出来る「特化」したものを作り上げ、高料金での集客をするべきかと思います。但し、短期に集中した集客を行うと「集客費用」も大きくなり、集客効果も一過性のものにもなり兼ねません。時間を掛けてじわりじわり積み重ね集客する方が、根強くお客様が固定化し積み重ねの上に良い結果が生まれやすいと思います。例えば、サロン名にキャッチコピーを付けるなども一つの方法かと思います。
例えば・・・
自然な美しい縮毛矯正の〇〇美容室・傷めないヘアカラーサロン 〇〇美容室・60日間崩れないデザインカットサロン〇〇美容室・毛髪改善サロン〇〇美容室・90日間ヘアデザインキープパーマ〇〇美容室
今、速攻で思いついた例なので、今一かもしれませんが、これらを含めた「特化」を表現した店名を構築すると費用もそんなに掛からず、長期にわたってお客様に伝えることが出来ます。これも一案ですが、方法論は多々あるかと思います。ウィックのことなら日本一揃う〇〇美容室・エクステのことなら県内一対応〇〇美容室・車いすの方快適№1 〇〇美容室などの様に一つのアイテムに特化するなども効果的だと思います。
ただし、名前だけではなくそれに特化した内容の施術をきちんと行う必要がありますので、各サロン様において工夫が必要かと思います。もう30数年前になりますが、弊社で「毛髪改善パーマ」という「特化」したサロン創りを提案した経緯があります。当時は全国を見てもその様なサロンはひとつもなく、反響はとても高く各サロン様は売上を大きく伸ばした実績があります。その際、まだ単品での薬剤を使用したパーマが大半でしたが、弊社から提供した「チオ」「シス」「サルファイト」を利用したハイブリットなパーマシステムを利用し、髪に合った薬剤を調合して施術を行うパーマメニューです。30年以上経った現在も有効な「特化」した集客として根強く継続しています。
弊社、取り扱いの商材の中には、パーマに限らず「特化」商品が多数ありますので、ご利用頂ければ幸いです。以上、弊社サイトをご利用のサロン様に少しでもお役に立てれば幸いです。今後共弊社「ネットサービス」を宜しくお引き立ての程お願い申し上げます。