酸性縮毛矯正施術 (酸性ストレート) をもっと理解して使いこなす! パートⅠ

パートⅠ:くせ毛の要因・くせ毛の種類・人気の縮毛・縮毛施術のアイロン・放置タイム・還元とは・膨潤とは・膨潤の仕組み・PPT・CMC 

目次

「酸性縮毛矯正剤を使いこなしたい」というお問い合わせ

Q : 「酸性ストレートパーマで購入した商材をもっと理解して使いこなしていきたいと思っております。CMCやPPTなど毛髪の知識が乏しいので、ご教示頂けますと助かります。phなど還元や膨潤に関しても疎いです。」

A : 上記お問い合わせ頂いた内容にメールだけで対応するには、不十分と思いましたので、本サイトに掲載し出来るだけの説明をさせて頂きます。

何故

本当に使いこなす為に・・・

基本的にはアルカリ矯正剤だろうが、酸性矯正剤だろうが、還元剤だけでなくベースになる毛髪化学の知識や薬学の知識が必要だと思います。実際のところ、一度講習会に参加して、やり方の大筋を覚えた上で、縮毛矯正を施術マニュアルと体感だけで、やられてきた方は少なくありません。その為に単純なことで、戸惑ってしまい失敗するケースも多く、一度失敗するとなかなか思い切った施術が出来ず、結果が出せないということに結び付いているようです。

その点を考慮して、毛髪化学・薬学等も含めて出来る限りのご説明をさせて頂きますが、毛髪化学や化学など日々進化はしていても、まだ解明されていない事柄や近年に解明され、今までの概念と異なることなどもございますので、その点はご理解の程お願い申し上げます。

※理解しやすくするためにニュアンス的な表現も入ることをご了承ください。尚、施術に関しては自己責任で管理をお願い致します。

「いまさら聞けない」と言う事柄て、結構あります!

いまさら聞けない事柄て、結構あります。 特にお問い合わせ頂いた方の様にpHや還元、膨潤というと名前やニュアンス的なことは分かるが、実際のところ「詳しくは分からない」方が圧倒的に多いのは事実なんです。今回は、それらも含めた内容も記載させて頂きます。

縮毛矯正
柔らかい感じを出せるスピエラ+GMT縮毛矯正

酸性縮毛矯正に限らず、縮毛矯正をやる上で必要な知識

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本来、酸性矯正だろうが、アルカリ矯正だろうがどちらでも良いはずで、要は「傷めない施術」と今、お客様から求められている「風合いの良い自然でやわらかな縮毛矯正」をやりたいが、それに該当する施術が酸性縮毛矯正と言うことかと思います。しかし、アルカリでも酸性でも共通する基本知識は重要かと思います。

いまさら聞けない①・・・そもそも縮毛(くせ毛)とは、

詳しくは、弊社サイト「【美容専門知識】縮毛矯正技術 くせ毛の種類と特徴」を参考にしてください。

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主だったくせ毛の要因

  • 毛穴変形説 毛髪を作る組織である毛穴自体が変形していることで、そこから伸びる際に毛髪も変形して育つためにクセ毛となってしまう説。特に毛穴の形状によって、毛穴の変形が強ければ、強いほど強いくせになる。楕円→波状毛  強い楕円→縮毛
  • コルテックス偏在説 毛髪内のコルテックス部分を大きく分けるとパラコルテックスとオルトコルテックスに分かれるが、パラコルテックスとオルトコルテックスが一方に偏ってしまうことで、起きるクセ。
  • S-S結合の偏在説 毛髪内のS-S結合(シスチン)の片寄によって、毛髪内の水分分布に不均等が起き、膨潤しやすい部分と膨潤しにくい部分が生じることで、うねりが生じクセが発生するという考え方。
  • 成長過程による頭蓋骨の大きさの変化による 幼少期から成長期になるにつれて、頭蓋骨が大きくなり頭皮も引っ張られ、それにより毛根や毛穴の形が変わっていくことで髪質が変化していくとされています。その他にも、思春期・青年期のホルモンバランスによっても髪質の変化が多少なりあるともいわれており、くせ毛だったのにストレートヘアになることもあれば、逆にストレートだったのにくせ毛になってしまうこともあります。
  • 先天的原因  いわゆる「遺伝」によるもの 毛母細胞で作られる過程での違いがある(黒人の場合 直毛の人は珍しい)
  • 後天的原因 加齢によるホルモンバランスの乱れや、食生活を始めとする生活習慣の乱れ ◆皮脂のつまり・汚れなど ◆髪の毛へのダメージ ◆栄養の偏りや急激なダイエットなど ◆ホルモンバランスの乱れ ◆内部組織(コルテックス)の偏り ◆ケミカルダメージによる ◆加齢によるうねり
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それぞれくせ毛の条件が違うために本来、各薬剤メーカーから出ている「縮毛矯正マニュアル」にあるワンパターンでの施術はむずかしいのです。20年以上前にそれぞれの髪に合わせた「縮毛矯正マニュアル」を作った記憶がありますが、当時30パターン以上のマニュアルを作りましたがそれでも足りませんでした。理由は、諸条件が多数あり、いくら多くのパターンのマニュアルを作っても無理だと気が付きました。やはり一つ一つの知識の積み重ねの上でその髪に対応するしかないかと思います。その基礎知識の上で考えると意外と簡単なことに気が付きます。

いまさら聞けない②・・・主だったくせ毛の種類

詳しくは、弊社サイト「【美容専門知識】縮毛矯正技術 くせ毛の種類と特徴」を参考にしてください。

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  • 波状毛 日本人に最も多いくせ毛 三つ編みをほどいたようなウェーブがついているタイプやうねりの軽いタイプ、表面は直毛に見えても内部が波状毛になっているタイプなど大きくうねりを描いたりゆらゆらと弧を描くような形状をしています。
  • 縮毛 細かく縮れたくせ毛のことで、黒色人種に多く見られます。髪の断面がそら豆のように湾曲していて、縮れが強いのが特徴。毛髪が縮れた状態になっています
  • 捻転毛 髪が縄のように捻れた状態のくせ毛。コイル状にねじれているタイプのクセ毛。髪、一本一本が「ねじれている」ため触り心地はざらついています。非常に切れやすいのが特徴です。
  • 加齢によるうねり 加齢により髪質が変化するのは頭皮のエイジングが原因です。
  • ケミカルダメージによるくせ 傷んだ髪は、キューティクルの損失によってタンパク質の一部が欠落し毛髪内の水分量が調整されなくなり、毛髪の部位の水分量に不均等差が生まれることで、くせ毛を発生させます。
  • 連珠毛 髪の内部が一定間隔で太くなったり細くなったり数珠状になっているくせ毛で、縮毛矯正によってストレートにすることが難しいという特徴があります。髪の太さが一定ではなく、凹凸感があります

今、人気の【縮毛矯正施術】について

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かつて、縮毛矯正はまっすぐにくせ毛を伸ばす事に全精力を使っていましたが、昨今のお客様ニーズは違います。

縮毛矯正というと「とにかく傷む!」というイメージも過去にはありましたが、昨今は、縮毛矯正でツヤツヤ・サラサラに変身、さらにバキッとした質感ではなく、「自然に見える」ことを第一にしたナチュラルヘアーで、且つ、毎朝のお手入れが楽であることが求められています。尚、人気店では、ツルツル・サラサラだけでなく一歩進んだ「柔らかさと風合い」を醸し出しており、「柔らかさと風合い」を出すために酸性還元剤スピエラは重要な役割になっているかと思います。スピエラ等に関しては、後記に掲載させて頂きます。

縮毛矯正施術のアイロン・放置タイム温度

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ここがポイント

アイロン施術はとても重要ですが、アイロンだけに頼るのは髪を傷めます。必要とする還元とアイロン施術のバランスが重要です。さらにアイロン時の髪の水分量が、アイロンを使う縮毛矯正の最大ポイント!

一般的に従来の縮毛矯正は、還元力の強いチオとアルカリのチカラを重視して伸ばしていました。昨今は、アイロンが使えるようになり、以前より容易に伸ばせるようになりました。しかし、基本的な還元をすることには変わりはありません。

アイロンを使用するようになった分、以前より伸びやすく時間も短縮されるようになりました。しかし、アイロンのチカラに頼りすぎると「タンパク質の熱変性」によって、髪を傷める原因になります。適度の還元が行われた上で、アイロンを使うというのが基本です。

また、中間水洗が不十分な場合、アイロンを使うことにより毛髪内に残留している還元剤の還元力が高温で増加します。さらに薬剤塗布後の放置温度も毛髪に応じた方法(常温・加温)が必要かと思います。還元が進みにくい髪質には、加温などする工夫をする必要があります。(理由は後記参照)

パーマ剤(還元剤)の作用は、pHの高いものほど膨潤度も大きくなりますが、髪の膨潤度を増加させる要因として、温度もあげられます。

◇ 明らかに温度が高いと膨潤度は増します。ただ温度でも加湿温度と乾熱温度では、髪(タンパク質)に与える違いがあります。(後記に説明)

以上のことから、還元剤(パーマ剤・縮毛矯正剤など)を塗布して放置するにも温度によって大きく変わるということがご理解いただけるかと思います。その為、薬剤を塗布して放置、その後軟化テストなどした場合、充分な還元が得られていないことで、放置時間延長が必要な場合、加温をするなどすると、必要とする還元までの調整がしやすくなります。全然、還元が足りない場合、ただ放置時間を延長するだけなら、いたずらに時間を掛けるだけになってしまいますので、加温をしてコントロールするなどは重要な施術の一部かと思います。(加温コントロール)

特にGMTは、基本的に加温が必要な還元剤ですので、加温をすることが基本と考えて良いかと思います。ただ、損傷毛や縮毛矯正の既存毛で、還元がそれほど要らないという場合は、常温で使用することもありますが、基本は加温して使用する薬剤です。(還元剤は、加温で還元能力が増すことを理解してください)

アイロン操作に伴うタンパク質の熱変性実は成功と失敗の重要ポイント

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ここがポイント

アイロン前の80%ドライが重要な成功ポイントであることが、この説明で理解できるかと思います

毛髪のケラチンタンパクは、タンパク質の中でも熱に強いのですが、高温によって変質します。熱にも「乾熱」「湿熱」がありますが、毛髪に与える影響力は違いがあります。

乾熱では、120℃から毛髪が膨らみ、130℃~150℃で変色が始まります。強度は、80℃~100℃で弱くなり始め、化学的には150℃前後からシスチンの減少が見られ、180℃になるとケラチンの構造が変化し、タンパク質の熱変性が起こります。湿熱では、100℃からシスチンの減少が見られ、130℃で熱変性が起こります。乾熱より湿熱の方が低温でも毛髪に影響を与えます。これは、水の熱伝導率によるものかと思われますが、サウナに70℃で入っても平気ですが、お風呂では70℃は入れません。

また、熱変性したタンパク質は元には戻りません。変性はタンパク質の構造を大きく変えてしまうため、不可逆的な反応なのです。例えば、目玉焼きの場合、変性の原因となったのは熱です。その他に変性の原因となるものとして、強酸・強塩基・重金属イオン・有機溶媒などが挙げられます。

しかし、現実に縮毛矯正で使用するアイロン温度は、一般的に180℃ ダメージ部で160℃が使われています。アイロン施術の前に毛髪を80%ドライにしてからアイロンに入ることと、余り何度もアイロンを通さないようにしてくださいという点はそこにあります。

毛髪がある程度、濡れていることでアイロンの熱は下がりますが、何度も通すと髪に大きな熱が伝わってしまい、熱変性を起こしてしまいます。また、水分も残しすぎると熱伝導率が上がり髪に熱が伝わりやすくなり髪を傷めます。(例、サウナとお風呂の違い) タンパク質(髪)は熱変性によって、硬化が起こります。冷却してもその状態から元の構造に戻ることはありません。ドライ80%とは、成功する為の重要ポイントなのです。

酸熱トリートメントで、初回は良いのだが2度・3度とやっていくと毛髪が固くなると言われることがありましたが、その理由が、これにあたり、熱と強酸によるものです。その後、その点を注意して酸熱トリートメントをして頂くようになってから、問題は起きなくなりました。縮毛矯正も同様で、2度目・3度目と施術回数を増やす場合、リタッチ部は温度を下げて軽いスルー程度に収めることが重要かと思います。その為にも過度な熱を使わなくて済む適度の還元を見極めることが重要です。伸びないから何度もアイロンをあてている施術は、髪を傷めることは上記からも理解できるかと思います。このポイントでの失敗は、還元不足とアイロン前の髪に残す適切水分量が大半です。(アイロンの水分量など施術に関して、パートⅡに動画がありますので、必ず見てください)

いまさら聞けない③・・・還元・膨潤について

これらを知るためには、まずは髪の構造を知るべきかと思います。そうでなければ、施術に使用する適切な処理剤などが理解できないかと思います。しかし、すべての構造や知識を習得するには、膨大な時間と努力が必要になります。その為、ポイントに絞り込んだ部分をご案内したいと思います。でも、私どもも全てを知っている訳でもございませんし、学者でもありません。日々の努力はしておりますが、行き届かない点などございましたらご容赦ください。

定義されている還元・酸化とは

還元 

  • 物質が酸素を失う 
  • 物質が水素と化合する
  • 原子やイオンが電子を得る

酸化

  • 物質が水素を失う
  • 物質が酸素と化合する
  • 原子やイオンから電子が失われる

10円玉は銅で作られていますが、新しい10円玉はピカピカですが、古くなると鈍い褐色になります。これは、空気中の酸素で徐々に酸化されて変色したものです。化学的には「10円玉が酸素で酸化された」ということです。でも、これを還元剤などで洗うと簡単にピカピカに戻ります。これは、「酸化された10円玉が還元剤で還元された」ということです。尚、一般的に物質が酸化される時には、熱を放出します。使い捨てカイロは、この酸化反応熱を利用して作られています。(ここでは記載しませんが、酸化剤であるパーマ2液選びの重要ポイントなのです→2液についてはこちら)

通常、美容技術においての還元とは、SS結合(シスチン)に水素を与えて、SS結合を切ることですが、膨潤との関係を表記したいと思います。

間充物質(マトリックス)中のSS結合について

間充物質(マトリックス)は、毛髪の中のフィブリル(繊維状ケラチン)の間にあって、これらをお互いに接合する役割を果たす物質で、非結晶領域とも呼ばれ、大部分はフィブリルより柔らかいケラチンで、無定形の低重合タンパク質です。化学反応の影響を受けやすい特質であり、ヘアカラーやパーマネントウェーブにおいて間充物質は重要な役割を担っており、薬剤がこの部分に作用することで、ウェーブが付いたりカラーリングされたりします。そのため間充物質が減少すると、パーマがかかりにくくなったり、ヘアカラーの色が落ちやすくなったりします。

間充物質(マトリックス)の存在する場所のイメージ

意外とイメージできないのが、この間充物質(マトリックス)なんですが、覚える上でイメージは大事です。より細かなものは、むずかしくするために割愛します。

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間充物質(マトリックス)は、下記の様な糸をぐちゃぐちゃにまとめた様な繋がりをしています。

あくまでイメージ的なことですが、間充物質は(これら糸が集まって)、ジェルを硬くしたものとして、イメージした方が捉えやすいかもしれません。

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ここがポイント

それを図にしてみると、上記写真同様こんな糸が集まった様な感じです。後で利用しますので、A図とします。

数的には水素結合・塩結合などもっと多いですが、図作成上ご容赦ください。

間充物質の分子構造
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この糸の様な繋がりは、アミノ酸同士が縦に繋がって構築しています(主鎖)。さらに側鎖と言われる①シスチン結合②塩結合③水素結合などが主で途中々で繋がっています。この繋がりが、毛髪の弾力と強度を作っています。

また、アミノ酸一個はこんな構成です。(下記) 本来アミノ酸は立体構造(左下)ですが、解り易くするために平面として「化学式」で表します。化学式と言ってもただ繋がっていることを表記しているだけですので、むずかしく考えないでください。

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上記のR部分の違いで様々なアミノ酸になります。

例えば、RにCH2SHが入ればシスティン・CH2CH2COOHが入ればグルタミン酸といった具合です。

因みに近くにある2つのシスティン同士がR部分で結合したものが、シスチン(SS結合)です。

下記は、アミノ酸が繋がった化学式でのイメージと立体構造のイメージですが、その繋がりが上記A図の糸の様なものの正体です。

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ここがポイント

上記のA図「間充物質の分子構造」は、還元前の図ですが、還元剤(パーマ剤)が毛髪(マトリックス)入るとA図にあるSS結合が、切り離されて下記の様に「水」分子が大量に入りやすくなり膨らみます。これが、還元剤による膨潤です。

※その後、2液を付けると再結合するので「締まる」という表現をされる方もいらっしゃいますが、その通りです。

これをアイロンなどで形を変えて、その後に2剤でSS結合を酸化して、再結合させたのが縮毛矯正やパーマです。これが大きく膨潤しすぎると、過膨潤として元に戻りにくくなります。膨潤しすぎた為にSとSを再結合させたいのですが、近くにSがないためにSS結合に戻れなくなり、S単体になってしまい、よく言われる傷みのバロメーターであるシスティン酸の発生元を作ってしまいます。

過膨潤すると毛髪表面にざらつきが生まれ、ツヤや手触り感も失います。イメージ的には、毛髪表面にシワやたるみ、変形が出来てしまうからです。

さらにご存知の通り、側鎖は大きく分けると

①シスチン結合②水素結合(イオン結合)③塩結合④ペプタイト結合 (そのほか、疎水結合・ファンデルワールス力)がありますが、下記の図は、すべての側鎖が切れて膨潤している様子です。すべての側鎖が切れると膨潤は大きくなることが理解できるかと思います。風船を膨らましたようなイメージです。

膨潤の仕組み

側鎖が切れることで、膨潤が拡大

基本

SS結合は還元によって結合が切断 → 酸化で再結合。

塩結合はアルカリに傾くことで結合が切断 → 等電点に戻すことで再結合。

さらに濡れることで水素結合が切断 → 乾かすことで再結合。このすべてを切断することで、膨潤は拡大します。

毛髪が還元していく過程

まず、1液を塗布すると1液の液体とアルカリ剤が毛髪のキューティクルの隙間から毛髪内部に入り込み、側鎖結合である水素結合を液体が切断し、アルカリ剤は、塩結合を切断します。その為、毛髪はゆるみ膨潤し、キューティクルの隙間が広がり、還元剤が毛髪内部に入りやすくなります。

毛髪内部に入り込んだ還元剤は、毛髪中のシスチン結合(SS結合)と反応し、SS結合を切断することで毛髪はさらに膨潤し、還元剤(1液)は、さらに入りやすくなり還元反応がさらに進むということになります。この繰り返しによって毛髪の還元反応は、パーマがかかる・縮毛が伸びる為に必要な還元まで繰り返されるいう経緯です。

膨潤について

毛髪の膨潤は、直径に対して行われ、長さにはほとんど変化は見られません。毛髪を水に漬けておけば、長さはせいぜい1~2%長くなる程度、但し、太さは12~15%ぐらい太くなり、重量は、30~40%増加します。還元剤を使用した場合はもっと大きく変化します。また、間充物質(マトリックス)は膨潤しますが、フィブリルはほとんど膨潤しません。

傷んでいる髪ほど膨潤率は、側鎖が少なくなっている分膨潤率が大きくなります。

縮毛矯正の膨潤テスト(軟化テスト)の時に髪を1本選び、その髪を引っ張って伸び方でテストしますが、ここで分かるように膨潤が進めば髪は今まで以上に伸びるので、その伸び方で膨潤を見極めているのです。上記の理屈が分かれば、理解できるかと思います。

正常な毛は引っ張ると1.5倍まで伸びるが、還元剤使用するともっともっと伸びる

ここがポイント

健康な毛髪を1本、両端を指で挟んで引っ張ると一時抵抗力がありますが、それをやや強く引っ張ると伸び始めます。常温では、1.5倍の長さまで伸びますが、それ以上伸ばせば髪は切れます。水分を吸収すると1.7倍程度の伸びになり、加熱水蒸気を充てると2倍まで伸びます。これは、水素結合が緩むからで、アルカリ剤を使用すると塩結合も緩み、さらに還元剤を使用するとシスチン結合も切断されてさらに伸びます。この伸び方で、どの程度、膨潤・軟化が進んでいるか分かるということになります。

もし、このテストをやっていないのであれば、毛束を使って①通常毛②濡髪③アルカリ剤塗布毛④還元剤使用毛の伸び方テストを行い技術習得すると良いかと思います。この習得によって、膨潤・軟化不足や過膨潤などの見極めに役立ちます。

毛髪の浸漬温度と膨潤度

水と熱によってケラチンタンパク質中の側鎖(水素結合・塩結合)の切断が、温度上昇とともに進み、膨潤度が高まります。

その為に加温を加えることも膨潤コントロールの一つです。下記は水だけですが、還元剤使用の場合もっともっと格差が出ます。

温度 (℃)膨潤度 (%)
2030.5
3030.7
6031.0
8031.6
10032.1
水の場合の浸漬温度と膨潤度

水のpHによる毛髪の膨潤関係

毛髪は、等電点で安定状態(pH4.5~5.5)になり、一番膨潤吸収しないことが分かりますが、酸性側とアルカリ側で膨潤は徐々に大きくなる。pH10以上になると急激に膨潤が増し、その後、溶解(溶ける)するようになります。

コールド液による膨潤度

ここがポイント

コールド液で、シスチン結合も切れpHによっては塩結合も切れるので、膨潤の程度が全く異なってきます。チオグリコール酸濃度6.0%・アルカリ剤をアンモニアで使用したものの各pHでの膨潤度をご覧ください。※10分浸漬 30℃

このグラフを見るとpH9以上から膨潤度は大きくなり、pH9.7以上になると急激に増大していきます。ある有力専門誌からの情報ですが、これは、溶け始めたと解釈した方が妥当とのことです。膨潤とは溶解の一歩手前の現象だからです。ここからpH9.7以上のコールド液は危険と言うことが分かります。平気で使っている方も時々見受けますが、本当に要注意が必要です。

また、ph5.0辺りでは、水の膨潤とほぼ変わりません。そこからも酸性縮毛矯正剤の重要性が分かるかと思います。

過膨潤

上記からも分かるように膨潤には、還元・側鎖・温度・熱・pHなどが、影響するためにそれを見極めながら行う必要があります。

いき過ぎた膨潤をさせると過膨潤して、髪の組織が壊れ、元に戻れず修復不可能となる可能性が高くなります。また、毛髪損傷原因の一つであるタンパク質の流出は、毛髪の膨潤度と密接な関係があり、膨潤度の大きい場合ほどその流出量も多くなる傾向があります。(間充物質(マトリックス)の流出)

アルカリ縮毛矯正を成功させるためには、この膨潤の見極めがとても重要で、ここがうまくいかないと「伸びない」とか「損傷が大きすぎる」などの結果にもつながってしまうのです。

膨潤を見極めるためにお勧めしたいのは、毛束を使ってアルカリ還元剤で、どこまでの膨潤度合いなら元に戻るのか、またどこまで膨潤したら戻らないのかをテストしてみることをお勧めします。これを何度か繰り返しテストすると「ここまで膨潤させても大丈夫」と言う自信がつきます。

しかし、この見極めも自信がないとなかなかできないかもしれません。そこで、安全性が高く、おススメなのが「酸性縮毛矯正」なのです。

ここがポイント

酸性還元剤の場合、この膨潤が極めて少なくなります。酸性還元剤の場合、アルカリが含まれていない為にほとんど塩結合は切断されません。pH4~pH7程度ではほとんど切断されません。(上記資料参照頂くと理解できます) その為、過膨潤が極めて少ないため安全性も高く、髪への負担が非常に低く、「柔らかさと風合い」を出せる「縮毛矯正剤」なのです。しかし、チオグリコール酸の酸性域にした還元剤の場合、薬機法で認められてはいますが、還元力が落ちるために縮毛矯正をやっても伸びません。また、パーマでも掛かりにくく、以前から利用が難しくなかなか利用するサロンさんが少なかったという現実があります。

そこで、私どもがおススメする還元剤「スピエラ・GMT」が誕生したのであります。しかし、この還元剤の場合、還元する毛髪部分がチオやシスとちよっと違ったりします。この還元剤については、次の「パートⅡ 1液(還元剤)」でご説明させて頂きます。

ここがすごい

アルカリ縮毛矯正に対応できる、当社でおススメとして「過膨潤」を抑制する製品があります。それが、ヌースフイットのCジェルやC9ジェルです。詳しくはこちら

疎水性「コポリマー」が過膨潤を抑制します!  ストレートに必要な最小限の膨潤にコントロールします。

通常はCジェル・強いくせの場合は、C9ジェル 使い方は、「詳しい製品情報はこちら」からご覧ください。

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Cジェル
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C9ジェル
詳しい製品情報はこちら
技術的対応

ここまで、膨潤と還元の説明をさせて頂きましたが、ここからは、前処理・酸性還元剤と順に説明させて頂きます。

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説明する量が多いので、ページが重くなるため、ページも更新しながら進ませて頂きます。

前処理

前処理・中間処理・後処理も含んでいますが、ご質問の「PPT」についてご説明させて頂きます。

PPT

PPTの使用について

より詳しい説明を知るために、こちらを必ずご覧ください。タンパク質・PPT・アミノ酸について詳細説明

パーマ・カラーの仕上がりレベルをアップさせるPPT

大筋、先程説明した間充物質(マトリックス)と同じ構造なんです。

毛髪は、約20種類のアミノ酸と脂質・水分で構成されており、ダメージ毛はその原因やダメージレベルによって、欠如しているアミノ酸成分・脂質量・水分量が異なります。毛髪には、自己回復力がない為、有効成分を補給・保護しなければダメージは進行してゆきます。その為にそれら各有効成分を使用した上で毛髪にダメージを与えずパーマやカラーを施術していく必要があります。その中でも毛髪の一番比重を占めるタンパク質の代用として、よく利用されるPPTについて、ご説明していきます。

一般的なPPTなど含めた処理剤の目的 (主たる目的)

前処理・・・・・ 薬剤の浸透をコントロール・抑制
中間処理・・・・・毛髪の補強
後処理・・・・・ 毛髪の保護補修

以上が、あくまで主たる目的ですが、それに見合ったPPTを使用する必要がありますので、参考にしてください。

【 毛髪に適したPPTの分子量  】

PPTはアミノ酸の複合体である事はご存知の事だと思いますが、複合数によって分子量が変わってきます。(分子量は、大きさを表す表現)

アミノ酸1ヶでは、平均分子量120で、
PPT分子量 500~600  その為、アミノ酸4~5ヶ結合したものと考えてください。
PPT分子量 1,000    アミノ酸8ヶ~9ヶ結合したもの
PPT分子量 2,000    アミノ酸16ヶ~18ヶ結合したものと捉えておけば分かりやすいかと思います。

PPTとは、アミノ酸が鎖状に長く繋がったもので「通常アミノ酸が100個以下.分子量10000以下」のものをいい、分子量10000以上の高分子化合物をプロティン=タンパク質と呼びます。

本来は、毛髪の損傷した度合に合わせて使用するPPTを選択する必要があります。毛髪の損傷を分子量で表現する事は大変難しいですが、適したPPTの目安としてキューティクルの損傷が小さい毛髪に浸透させる場合・・毛髪組織内の間充物質の補強、あるいはモイスチャー効果を高める意味では、分子量 400~700程度のPPTが良いと言われています。

キューティクルの損傷が大きいダメージ毛及びハイダメージ毛の様な間充物出が減少している毛髪には分子量1000~2000。更にハリコシがない毛髪には、分子量2000~3500程度までのPPTを使用する事で、毛髪を硬く、しっかりとさせることが出来ます。また、薬液の浸透を抑える被膜剤として使用するなら分子量10000以上のものが安全だといえます。

そんな使い分けをしなくても済む複合的な分子量の違う3種類のPPTをミックスしたPPT製品などの場合、例えば①分子量400 ②分子量3500 ③分子量10000の混合PPT
①分子量400 分子量が小さいので毛髪内部に浸透しマトリックスを補修  ②分子量 3,500 毛髪にハリ・コシを与える。 ③分子量 10,000  薬液の浸透を抑える被膜剤
3つの違う大きさのPPTが配合されていることで、すべてに対応してくれることになります。

例えば、ヌースフィットPPT32などは、32種類の大小各種サイズのPPTが入っています。詳しくは、マルチPPT32

使用方法などは、各製品の「詳しい製品情報はこちら」をご覧ください。

マルチPPT32 

ヌースフィットPPT32などは、32種類の大小各種サイズのPPTが入っています。

マルチPPT32
詳しい製品情報はこちら
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パワーPPT+

がっちり仕上げのPPTとして、分子量1000~40000ですが、比較的、高分子ケラチンを多く含み、皮膜効果の高いパワーPPT+

詳しい製品情報はこちら
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パワーKRT+

しっとり仕上げのPPTとして、分子量300~40000ですが、比較的、低分子ケラチンを多く含む内部補修効果の高いパワーKRT+

詳しい製品情報はこちら
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パワーR2+

R2+

架橋性強度回復剤として、毛髪内に架橋し、強度低下を防ぐパワーR2+

詳しい製品情報はこちら
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添加剤・処理剤情報

様々な添加剤・処理剤がありますが、上記を配慮した上で毛髪に応じたPPTを使用するべきです。添加剤・処理剤情報

詳しい製品情報はこちら

下記にも掲載していますが、ほとんどのPPT使用にあたっては、塗布後ハーフドライにすることが必要です。詳しくは、下記を参照してください。

【pHの確認】

また、PPTの選択で忘れていけない事は、PPT自体のpH(ペーハー)による影響です。PPT自体が酸性域が強い商材ですと通常のアルカリパーマ薬剤を使用した場合、薬液効果を弱め、中性~弱アルカリ側のPPTですと薬液効果を弱めにくい結果となることを想定し、使用する必要があります。その為、PPTのpHを確認されることをお勧めします。

【大筋で覚える】 大筋に区分けしたケラチンPPT・コラーゲンPPTの違い

ケラチンPPTは硫黄が(SS結合のS)が含まれるPPT。 その為、ハリコシが出やすいPPTと思ってください。コラーゲンPPTはしっとり系(保湿重視)のPPTと思って結構です。
コラーゲンPPTとケラチンPPTの使い分けは、簡単に分けるとハリコシ重視orしっとり系(保湿重視)で考え、後は分子量の大きさで用途が分かれ、分子量が小さい=低分子PPTという(分子量400~500以下) 分子量が大きい(分子量1000以上 損傷毛なら損傷部分に入る大きさ)  毛髪の表面の補修系は分子量10,000ぐらい=高分子PPT  と覚えてください。毛髪の条件に応じて使用する必要があります。内部補充は、低分子の分子量が小さいもの。表面などは、損傷が大きいので高分子でないと抜けてしまうので、毛髪の表面の補修系は高分子のものを使用する。ここのポイントだけ覚えておく必要があります。あとは、個々の商品の特徴を理解して活用するだけです。

ハーフドライして水を抜く理由 (重要)

ここがポイント

時々、PPTなんて流れ落ちてしまうので、コストの無駄と表記されているサイトを見ますが、ただ塗布するだけならその通りの一面があります。

しかし、PPTは基本的に使いやすくするために水などで希釈して製品化していますが、本来PPTなどは簡単に言えば髪と同じ固形物で、その固形物を毛髪内に残して使用するものなのです。その為、塗布後ハーフドライにして水を抜き、使用しなければ髪と結合することなく流れ落ちてしまい結果が得られないという事になってしまいます。(付けるだけならコストアップの無駄使い) このことから、ハーフドライにして使用する為に余りにも希釈率を大きくし過ぎると水が多く、ドライにした時に成分の固形物の量が僅かなものとなってしまい効果が減少してしまうことが解るかと思います。その為、通常施術では、2~3倍希釈程度が良いかと思いますが、5~10倍希釈にして、何度も重ねて使用するなどでも良いかと思います。(ホームケアに利用するときなど適しているように思います)
ハーフドライすることは重要で、毛髪内にPPTの定着率をアップさせる役割があります。

※因みに弊社で、PPTそのものを完全に水が抜けて固形化するまで、コップに少量入れて自然放置でテストしてみた結果、3年掛かってようやっと固形化しました。それぐらい蒸発しないために保湿力が強いという事です。固形化したPPTは、しっかりコップ内に固まった状態で固定化され、取り出すことは出来ませんでした。

考えようによっては、PPTを塗布したあと完全ドライで固定化してから、還元剤を付けるもアリかもしれません。

CMC

CMCとは、細胞膜複合体のことで、キューティクルとキューティクルの間やキューティクルとコルテックスの間・コルテックスとコルテックスの間にも存在し、これらの細胞間の接着に関与し、さらにこれらの間の水分やタンパク質の溶出経路として、また外部からの水分やパーマ剤・カラー剤などの薬剤の浸透経路ともなっています。CMCは、水分を保ち、毛髪の栄養成分の流出も防いでいます。しかし、パーマ剤やカラー剤の浸透経路ともなっている為にそれらと一緒に少しづつ流出するため補充してあげることが必要です。

CMCの存在場所

①キューティクルとキューティクルの間に存在するCMC

②キューティクルとコルテックスの間に存在するCMC

③コルテックスとコルテックスの間に存在するCMC

そして、CMCの外部β層に18MEAが存在し、毛髪の疎水性と潤滑の役割を果していると言われています。

パワーリピット+(LPD+) CMCの補給剤

CMCの失われたダメージ毛に脂質マトリックスを補給する製品がパワーリピット+(LPD+)

キューティクルやキューティクル・コルテックス間CMCの脂質マトリックス不足によるパサつきなど、ダメージヘアへ脂質を補う修復トリートメント剤です。パーマやカラーなどの毛先の保護剤としても使用できます。

使用方法などは、「詳しい製品情報はこちら」をご覧ください。

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続きは、パートⅡ 1液 (還元剤)に続く

技術対応3

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