スピエラ・GMT酸性還元剤を使いこなす必要な知識・チオ換算
縮毛矯正・パーマ・デジタルパーマの繁栄店を目指すなら必要な専門知識だと思います!
スピエラやGMTなどの酸性還元剤を使い、縮毛矯正・デジタルパーマ・パーマなどを成功させるためには、「チオ換算」の知識は必要です。マニュアルに適合した同じ髪質ばかりなら問題ないのですが、人の髪は千差万別だけに全ての髪質に合わせたマニュアル化は難しい。アルカリが含まれない酸性域のスピエラ・GMT使用の際、毛髪の膨潤がほとんどない為にテストカールや軟化チェックの際に必要な還元に達しているか分かりずらい。その為、還元力の強さを測る為に事前に「チオ換算した還元剤濃度」を知ることは、とても重要な役割を果します。
過去、サロンからの相談で「上手くいかない」という方の薬剤の使い方を調べると、「髪を傷める強い還元値」になっていたり、これでは「掛からない・伸びないという低い還元値」になっているサロンも少なくはありませんでした。また、異常な還元値にも関わらず、たまたま髪にあった還元値になりうまくいったが、縮毛矯正のお客様が増えるとトラブルが増加したサロンも見受けられました。
スピエラ・GMTなどの化粧品登録の還元剤使用にあたっての規制として、 (スピエラの化粧品名は「ブチロラクトンチオール」GMTの化粧品名は「グリセリル モノ チオグリコレート」)医薬部外品のパーマネント剤ではチオグリコール酸の還元剤濃度が7%以下(ジチオジグリコール酸を添加した場合は11%まで)に制限されているので、同様に換算された還元剤濃度が7%以下とされています。さらに薬機法での化粧品とは「作用が緩和なもの」とされています。
安全面で考えても「チオ換算にして7%以下の還元剤濃度」が重要な点となります。
まずは、薬機法に沿った医薬部外品のパーマネント・ウェーブ用製造承認基準を一部お知らせいたします。
パーマネント・ウェーブ用剤 製造承認基準
1剤 | チオグリコール酸 コールド式 | チオグリコール酸 加温式 | システイン コールド式 | システイン 加温式 |
温度 | 室温 | 60℃以下 | 室温 | 60℃以下 |
還元剤濃度 | ※ 2.0~7.0% (11.0%) | 1.0~5.0% | 3.0~7.5% | 1.5~5.5% |
アルカリ度 | 7ml 以下 | 5ml 以下 | 12ml 以下 | 9ml 以下 |
pH | 4.5~9.6 | 4.5~9.3 | 8.0~9.5 | 4.0~9.5 |
※ 還元剤濃度7%以下・但し、 超えた%分ジチオジグリコール酸を添加した場合は11%まで。チオ濃度の上限7% を超えた7.1~11.0%のもの(11%上限)は、薬剤中に「ジチオ(抑制作用)が1.0%~4.0%含まれていて最終的には7%のチオ換算」なのです。
【上限「チオ換算7%」とは】
スピエラやGMTもチオグリコール酸 (コールド式 )に換算して、同様の還元剤濃度 上限の7%に抑える薬液配合にする必要があります。その為にスピエラやGMTを「チオ換算」して、何%の還元剤濃度になるかという計算が必要なのです。薬機法に定められた「医薬部外品」では、チオ濃度を7%上限と定めて作られているので、今まではそもそも還元剤濃度10%のチオは存在しませんでした。その為、大きな事故はありませんでしたが、近年は化粧品登録の還元剤登場により、サロンでの薬剤調整となりましたので、きちんとした管理体制がサロンに求められています。一つ間違えば、チオ濃度15%・20%といった危ない還元剤を間違って作ってしまう環境下にあるのです。
規制緩和になったことで「チオの薬剤に例えた場合、チオ7%の薬剤に匹敵するものを上限」として考え配合する知識が求められます。 また、使用薬剤の還元剤濃度で、ある程度の還元力が解りますので、参考にして施術を行うのに役立ちます。 チオ換算することでどの程度の強さかも理解できますし、髪に合わせたチオ換算された薬剤も作れます。 特にGMTやスピエラはアルカリを使用していない為「膨潤」がほとんどありませんので、軟化チェックなどが難しい為、チオ換算した数値は髪質や髪の状態を考え設定する参考指数になります。その指数とは、下記を参照して頂ければ理解しやすいかと思います。
では、そのチオ換算とはどんなものかと言うとお分かりの通り「薬剤の強弱」を表す指数です。最大は7%。最低は含まれていない0%。となりますが、では、1%ではどの程度の強さ? 3%では? どの程度の強さということになります。
【解り易くする目安】
これを伝えることは本当に難しく、スタイリストの美容師さん自身がテストされ体感で強弱を知るべきものだと思うのですが、中々その環境に恵まれない方も少なくない為目安ではありますが作った指標とお考えの上ご活用ください。
目安を表すためにシステインの最大強い薬(システイン薬事法の濃度上限7.5%)の薬剤を単純にチオ換算すると「チオ換算5.7%」となります。(但し、アルカリ剤が入っていることで、強さはさらに増しますが、今回の説明内では混乱も生じますので外します)
目安として、システインの最強薬剤の強さは「チオ換算5.7%」となります。
通常、システインはカラーもしていないバリバリ元気な超健康毛には不向きで、カラー毛には合うかと思います。(あくまで目安として考えてください)
ですから、カラー毛には「チオ換算7%」まで必要ないことが理解できるかと思います。カラー毛に必要なチオ換算は最大5.7%もあれば十分だと理解できます。
まとめとして
チオグリコール酸の最強薬剤は「チオ換算7%」が上限 ※ここではアルカリの事は外して考えてください。
そして、システインの最強薬剤は「チオ換算5.7%」が上限 ※ここではアルカリの事は外して考えてください。
同様に様々な還元剤を「チオ換算」した計算をすれば、各還元剤の強弱が分かります。 どんな薬剤もパワーが分かれば、扱い易い目安になります。それがチオ換算と思って頂くと良いかと思います。
チオ換算を一つの目安と考えると選択する薬剤(あくまでアバウトですが)の指標が出ます。
- バリバリの超健康毛に必要な チオ換算 6~7%ぐらい
- 健康毛に必要な チオ換算 5~6%ぐらい
- 普通毛に必要な チオ換算 3~5%ぐらい
- カラー毛に必要な チオ換算2~3%ぐらい
- 傷んでいるカラー毛に必要な チオ換算1~2%ぐらい
※ここではアルカリの事は外して考えてください。
【注意事項】
チオ換算7%を超える薬剤は危険、絶対にやってはいけません。髪のダメージ度合いによっては、ご存じの通りチオ換算6~7%の薬剤は強すぎます。はやり安全圏は健康毛でも「チオ換算5%台」が目安。しかし、髪のダメージ度合いによっては、5%でも強すぎることもあるので、注意してください。毛先の前処理等は、基本中の基本ですが、上記の通り根元・毛先では毛髪の状況が違ってきますので、それに合わせて前処理により調整する必要があるのです。
◇ 正確な数値(スペック)を公開しない(アバウトな数値を伝える)メーカーもありますので、その際はリスクも伴うため、使用に充分注意の上ご利用ください。
ちょっとアバウト過ぎかもしれませんが、チオ換算の強弱を伝えたいのです。これが分かれば、チオ換算1%なら弱い薬剤 チオ換算7%にもなる薬剤は強い薬剤と分かり、そして、毛髪に合わせたチオ換算は、おおよそですが上記のチオ換算と考えれば、使用する薬剤を考えることができます。あとは、実体験で習得することです。
【薬剤のパワー(力)の強弱】
還元力の強度を上げ下げするものとして、通常の薬剤には「アルカリ」の存在があります。アルカリは、毛髪を柔らかく軟化させて薬剤の浸透を良くしたり、薬剤のパワーを上げたりしてくれますが、それに伴って髪を損傷させる面もあります。さらに還元力の強度を上げ下げするものに「熱」があります。
還元剤のチカラ+熱のチカラ=全体の還元力
さらに髪も強い髪~傷んだ弱い髪まであるので、「髪の状態×還元剤のチカラ×熱のチカラ」での方程式が出来ます。
例えば
健康毛で10のパワーが必要な髪とします。 その際は、薬の力7+熱の力3=10のパワーでパーマはかかります(縮毛矯正は伸びます)。
しかし、薬の力を抑えて、熱の力を使った場合、薬の力5+熱の力5=10で パーマがかかります( 縮毛矯正は伸びます)。
※良い例が、縮毛矯正のアイロンです。アイロンの熱が140℃では伸びないが180℃にするときれいに伸びる。
ダメージ毛なら5のパワーでかかるとします。するとその際は、薬の力3+熱の力2=5で パーマがかかります ( 縮毛矯正は伸びます)。
もしくは、薬の力5+熱の力0=5でも パーマがかかります ( 縮毛矯正は伸びます)。
【必要なパワーを創り上げる方法】
必要なパワーを満たすことがポイントとなり、さらにその中で最も髪を傷めない方法論を用いて行うことが最大ポイントです。薬剤的なこととしては、一番髪を傷める「アルカリ」を使用しない薬剤を用いて、しかしパワーは必要なパワーを満たすものであるのであればベストです。
その薬剤が、スピエラやGMTなのです。両方ともアルカリを含まない酸性還元剤です。しかし、GMTはチオに負けないしっかりした還元力を持った薬剤で、スピエラは、還元力は弱いですが艶や手触り感を良くすることが出来る還元剤であり、しなやかさも表現できます。その長所を使って、パーマやデジタルパーマ・縮毛矯正などを行っていくのですが、その際に熱の力を使って、パワーアップしたものにしていきます。それが、アイロンであったり、デジタルパーマの熱であったりします。勿論、薬液塗布の際に加温機などで熱を加えることも同様の事と言えます。(熱に対する還元力の事であり、その他の結合などは理解しにくくなるため除外して説明しています)
後は、どの程度の熱を使うのかという計算になります。薬液的にも、熱的にも、傷めないちょうどよい設定を創り上げたものが最高の結果を生むわけです。それには、経験と実績によるものとある程度の知識が求められるわけですが、その際に先程の「チオ換算」が目安として必要となる訳です。その最高のちょうど良いところを求めるわけですから、薬剤を知ることはとても重要で、コロコロ薬剤を変えていては、その領域に達しません。極めることができないということです。スタイリストは、実際に色々テストしてそのベストポイントを求めて、お客様に使える様に設定していく訳ですから、その際に知っておく必要な情報の一つに「チオ換算」は必要なのです。
【スピエラ・GMTとは】
ここで簡単に「スビエラ・GMT」のもつ特異性をお伝えします。
色々特徴はあるのですが、ここで細かいことまで告げると分からなくなってしまうことも考えられるので、本当に簡略的に説明いたします。大筋が解るようになれば、そこからさらに一歩踏み込んでいけるかと思います。
通常のチオ・シスなどの還元剤は、毛髪内のマトリックス間の結合に対して行いますが、マトリックス間は親水性で、チオ・シスも親水性の還元剤です。※ 親水性(水と親しみやすい)・疎水性(油分と親しみやすい)
毛髪内のフェイブル間は疎水性でありますので、親水性のチオ・シスなど通常の還元剤は入りにくくなります。
しかし、スピエラ・GMTは、疎水性と親水性を両方持っておりますが、疎水性が強い還元剤です。
その為、今まで還元できなかったフェイブル間の還元もする事が出来る為に酸性域でもしっかりかかる力を持っているのです。そのことから考えるとわかるのですが、特にマトリックスの少なめの毛髪=細毛に特に有効な結果が出ているはずです。
下記の画像説明
「通常のパーマ」をご覧頂くと解るように(「M還元」とはマトリックスだけの還元を表しています)M還元だけでは、マトリックスが膨らんでいるだけで、 フェイブル同士の間の結合は切れていない為、きちんと伸びて(ずれて)いません。(縮毛矯正なら伸びていない)
しかし、「FMCB」ではマトリックス間の結合も切れ、さらにフェイブル同士の間の結合も切れているために全てがずれることで伸びるのです。(縮毛矯正なら伸びる)
因みに「FMCB」とは理論として説明しています。参考資料は、以下の弊社オフシャルサイトからご覧ください。
①ヌースフイットFMCB理論 ②ヌースフイットFMCB薬剤 ③ヌースフイットFMCB基本工程
※FMCBの説明は、混乱してしまう可能性がある為これ以上ここでは致しません。別途上記を参照してください。
【大筋、チオ換算を知る必要性が分かったと思いますので、本題です】
チオ換算をする!!
チオグリコール酸、システインなどの薬事(現行は薬機法)の対象になる還元剤には、還元剤濃度の上限が定められています。「これ以上は危険が伴う」からということは既に理解されたと思います。
但し、近年の化粧品カーリング剤(化粧品登録剤)は、先程もお伝えした通り、薬事法では定めがありません。昔と違い近年では、化粧品登録のものでも還元力があるものが出てきており、規制が困難なために自主基準での判断としている背景があることはお伝えした通りです。
再度お伝えしますが、例えば、薬事法ではチオの濃度は7%上限(ジチオジを4%加えれば11%まで)です。それに合わせて危険性を回避するために化粧品カーリング剤を使用する際にチオ濃度に換算して7%までの薬剤配合にしなければ危険が伴うので計算して使用することで毛髪に合ったものにする事が出来るということです。しつこく何度も同じことをお伝えしましたが、重要な点であることをご理解ください。
【チオ換算を計算する為に必要な知識】
例えば、チオグリコール酸とGMTを使ったパーマ液の場合を比較すると、チオグリコール酸は薬事法の医薬部外品、GMTは化粧品登録の還元剤です。
そこで、GMTは化粧品登録の為に規制がないので、薬事法に合わせたチオの濃度と比較する訳です。
では、チオグリコール酸のパーマ剤とGMTパーマ剤をどのように比較すれば良いでしょうか?
ここでは、例としてチオグリコール酸をチオ濃度6%とします。
GMTも同じ様にGMT濃度6%のパーマ剤を作ればいいのかというとそうはいきません。
GMTとチオでは物質が違いますから、ただ単純にGMT濃度6%のままでは比較できません。なぜなら、6%チオグルコール酸のパーマ液に含まれるチオグリコール酸分子の個数と、GMT6%のパーマ剤に含まれるGMT分子の個数が違うからです。
同じ量でも含まれる分子(分子量)の個数が違う・同じ重さでも個数が違う・なぜ違うかというと、チオグリコール酸の分子量は約92・GMTの分子量は約166と違うからです。要するにチオの方が小さい・GMTは大きいということです。
また、簡単に表現させて頂きますが、同数の分子量で初めて同じ力(作用するパワー)となると考えてください。
何故違うか?
世の中の物質は、原子と言われるこれ以上分けることのできない最小物質から出来ています。
地球上での最終物質(例 炭素 水素 など今現在118種類=原子)
それらの物質が互いに結びついて、出来たものが分子です。(例 酸素・窒素・水素など無限にある)
その分子がもう少し多く集まった物質の一つがチオグリコール酸やGMTなどの物質であります。
そして、チオグリコール酸やGMTなど各種の物質は、たった4つの C 炭素 H 水素 O 酸素 S硫黄 で出来ています。(ここでは簡単に説明するため、分子が集まってできたものと解釈してください)
チオグリコール酸は、化学式で表記すると C2H4O2S (化学式で記載する方が解り易いので表示しました。)
GMTは、 化学式で表記すると C5H10O4S
C 炭素 H 水素 O 酸素 S硫黄 ご覧のようにの4つ原子が集まって出来ています。
原子には相対質量と呼ばれるものが存在します。それを原子量と言いますが、(その)ここでは簡単に考えて、大きさを意味します。
分子量
分子の相対的質量を表す次元のない量で,分子を構成する元素の原子量の総和である。 例えば,水素Hの原子量は1.0,酸素Oの原子量は16.0であるから,水H2Oの分子量は1.0×2+16.0=18.0である。
引用 コトバンク
各原子量は以下の通り
C(炭素)は、原子量12 ・ H(水素)は 原子量1 ・ O(酸素)は 原子量16 ・ S(硫黄)は 原子量32
そうするとチオグリコール酸は、C2H4O2Sの原子数は、(化学式はCCHHHHOOSと並んでいる意味です)
C+C+H+H+H+H+O+O +Sと並んでいるわけで、個々の原子数を足し算していくと分子量が出せます。
12+12+1+1+1+1+16+16+32=92の原子量があることがわかります。この原子の数を数えた総数を分子量と呼び、チオグリコール酸の分子量は92としています。
GMTは同様にC5H10O4Sですので(化学式はCCCCCHHHHHHHHHHOOOOSと並んでいる意味)
12+12+12+12+12+1+1+1+1+1+1+1+1+1+1+16+16+16+16+32=166となります。
これが「分子量」です。簡単ですよね!
さて本題に戻りますが、チオグリコール酸(分子量92)、GMT(分子量166)の分子量の違うものを同じ%を入れたらGMTの分子の個数は、チオグリコール酸の分子の92対166となり、92÷166=約0.55倍にしかなりません。
これでは、通常使用する一人分パーマ剤80ml使っても、GMTはチオグリコール酸の55%の分子が作用しているにすぎなくなります。(簡単に言うと同じ濃度の場合、同じ量では55%の力(作用)しかないということ)
還元剤の強さを比較するには、同じ個数の分子が作用するように薬剤を調整する必要があります。例えば、サッカーで対戦する際に同じ人数で対戦しないと優劣が付けられないのと似ています。
では、例としてチオグリコール酸の6%濃度に匹敵するGMTパーマ液のGMT濃度はどのくらいかということになります。
チオグリコール酸92対GMT166なので、166÷92=約1.8倍GMTは必要とするので、チオグリコール酸 還元剤濃度6%ですので、6%×1.8倍=10.8%のGMT還元剤濃度が必要であるとわかります。このGMT濃度が「チオ換算6%」に匹敵するということです。
この計算が出来れば、チオ換算7%以内に抑える薬剤配合が計算できます。
チオグリコール酸とGMTの還元力同等な濃度バランス
チオグリコール酸 還元剤濃度6%のパーマ液 = チオ還元剤濃度6%の1.8倍 6%×1.8倍=GMT10.8%の濃度が必要
要するにGMTの場合、濃い濃度のものを使って、チオ換算6%に合わせるということです。
チオは6g=GMTは10.8g で同じ還元力を持ったパーマ剤ということになります。
当然その分重くなりますが、同じ数の分子量となります。=同じ還元力(作用するチカラ)となる訳です。
これがチオ換算に関しての説明です。
因みに何にでも対応できるように各還元剤の分子量を表記しておきます。
還元剤 | 分子量 | 化学式 |
チオグリコール酸 | 92 | C2H4O2S |
チオグリコール酸アンモニウム | 109 | C2H7NO2S |
システアミン | 77 | C2H7NS |
システアミン塩酸塩 | 113 | C2H8NSCI |
スビエラ | 118 | C2H6O2S |
GMT | 166 | C5H10O4S |
システイン | 121 | C3H7O2S |
塩酸DLシステイン | 176 | C3H10CINO3S |
亜硫酸ナトリウム(サルファイト) | 126 | Na2SO3 |
チオグリセリン | 108 | C3H8O2S |
更に解り易くする為にパイモアグラッツのチオ換算で具体的に出してみます。
パイモアグラッツのスピエラは、R33エッセンス・パイモアグラッツのGMTは、G44エッセンス(旧製品) (現行はG48コンセントレートですが、ここではG44の方が分かりやすい為G44選択)という商品です。
R33エッセンス すでにメーカー側でチオ換算して計算されて「チオ換算33%」G44エッセンス同様に「チオ換算44%」として発売されています。
ここでおさらいですが、G44エッセンスのGMT濃度を出してみます。
G44エッセンスはGMTですので、分子量は166。それに対してチオは92です。チオはGMTの1.8倍の分子量です。=1.8倍のパワーを持っています。
G44エッセンスはチオ換算44%で作られているので、GMT濃度は1.8倍となり、79.2%のGMT濃度と言うことが簡単に分かります。
他社メーカーの場合、チオ換算した計算で表示しないで「GMT濃度79.2%」と表示される製品が多いのですが、パイモアは親切にチオ換算して表示してくれています。その為、普通に計算すると今の逆で、「GMT濃度79.2%」だから、分子量は1.8倍を計算すると「チオ換算44%」と分かるのです。
さらに続きますが、G44エッセンスは「チオ換算44%」の原液ですから、このままでは濃すぎて使えません。
パイモアグラッツには、希釈剤として、「L-0ローション」という還元力0の希釈剤があります。その希釈剤を使って、G44エッセンスの割合1に対して0ローションを10の割合で希釈する訳ですから、11倍希釈となります。
44%÷11希釈=4% チオ換算4%の薬剤となります。
同様にR33エッセンスもチオ換算計算されて「チオ換算33%」ですので、1:10の希釈率では11希釈となり3%のチオ換算となります。(共に0ローション・0クリーム使用で計算)
さらに希釈されたG44エッセンスのチオ換算4%の薬剤とR33のチオ換算3%の薬剤を1対1の割合で混ぜ合わせて薬剤を作ると、4%+3%=7%÷2=3.5%となり、チオ換算3.5%の薬剤が出来上がりました。
この作り上げた薬剤の特性は、スピエラ50%・GMT50%の還元剤で、両方アルカリを含まない酸性還元剤です。GMTはチオに負けないしっかりした還元力を持った薬剤⊕スピエラは還元力は弱いですが、艶や手触り感を良くする特徴をもった還元剤です。そして、還元能力は「チオ換算にして3.5%」の強さを持った還元剤と言うことになります。では、「チオ換算にして3.5%」の薬剤はと言うと、おおよそ「かかりやすい普通毛の人向き」薬剤に適しているものとなります。しかし、この薬剤のパワーを上げたい場合、熱を使うことでパワーアップさせる事が出来ます。
私の所見では、かかりやすい普通毛~カラー毛のパーマには適していますが、縮毛矯正剤として使用するにはちょっと弱いと思います。また、デジタルパーマに使用する場合、熱を最大限85℃に設定しても少し弱めの薬剤となっていますので、やはりカラー毛~かかりやすい普通毛用かと思いますが、スタイリストさんの思うウェーブによって強弱があり、変わるかと思いますので、一概に言い切れない部分があります。ただ基本的なものとしては、やはりカラー毛~かかりやすい普通毛用かと思います。(ウェーブの強い・ゆるいは感覚的なもので個人差があります。その為、ウェーブを出そうとしているスタイリストの思惑と強弱が一致する必要があります)
※熱を有効に使用すれば、パワーアップしますので、ある程度のコントロールは可能です。
追加 さらに進んだ計算方法を記載します。2022年2月12日 追加更新
例として、GMTにチオを加えてW還元 (パイモア・チオが含まれる希釈剤L-2.8)+GMT
チオが含まれる希釈剤L-2.8(C2.8も同様)を使用して行うと(L-2.8はチオ換算2.8に設計されています)
その為1:10比率で、GMT割合1に対してL-2.8が10の場合、
G44エッセンス (チオ換算44%)+L-2.8 の場合、L-2.8がチオ換算2.8%で作られており、
GMT 1に対してL-2.8が10の割合の場合
計算方法は、チオ換算44%+(2.8%×10)=72÷11希釈=チオ換算6.5%となります。
例 G44エッセンスをL-2.8で希釈 1対15の場合
チオ換算44+(2.8×15)=86÷16希釈=チオ換算5.375%(約5.4%)となります。
例 R33をL-2.8で希釈 1対10の場合
チオ換算33+(2.8×10)=61÷11希釈=チオ換算5.5%となります。
例 R33をL-2.8で希釈 1対15の場合
チオ換算33+(2.8×15)=75÷16希釈=チオ換算4.6875%(約4.7%)となります。
例えば、G44エッセンス(チオ換算44%)とR33エッセンス(チオ換算33%)とL-0・C-0ベースの場合(L-0・C-0は還元剤を含まないためチオ換算0です)
R33とL-0を1対9に変更でチオ換算3.3%となります。さらにG44とL-0を1対7に変更でチオ換算5.5%となります。これをR33(スピエラ)1対2 G44 (GMT)で使用すると (3.3%+5.5%+5.5%)÷3=チオ換算4.77%の還元剤が出来ます。
※コストを下げる場合は、攪拌して作ることで容量が少なくて済みコストダウンも図れます。
例 ①チオ7%のチオグリコール酸・②スピエラ チオ換算39%・③GMT チオ換算27.5%の薬剤を以下の配合で混合した場合のチオ加算
※スピエラ・GMTは、チオ換算された状態での計算
①チオグリコール酸 100ml ②スピエラ 10ml ③GMT 10ml →10:1:1の配合ということです。
①チオ7%×10 + ②チオ39%×1 + ③チオ27.5%×1 =136.5%
136.5%÷12=11.375% この薬剤の配合比率で還元剤を作った場合、チオ換算11.375%の薬剤となります。
但し、この薬剤ではチオ換算7%を超える薬剤のためにおススメ出来ません。
※チオ換算の計算時に於いて、還元剤濃度(例 GMT濃度・スピエラ濃度など)から計算する場合、細かく小数点以下の計算に基づいて行った計算とアバウトな四捨五入で計算した場合、当たり前ですが最終的に算出した数字はその分誤差が出ます。その為、ご自身で出された数値とメーカーからの指数と多少違うことがあることもあるかと思いますが、あくまで計算範囲の問題だけです。
さらに知ってほしい「各種還元剤とpH・温度・放置時間のウェーブ形成力」同じチオ換算6%での特性
還元剤パワーグラフ
二十数年前までは、亜硫酸塩を配合した化粧品カール剤を除いて、パーマはすべて医薬部外品で、使用できる還元剤もチオグリコール酸塩類とシステイン類しかありませんでした。しかし薬事上の規制緩和により、システアミン、スピエラをはじめ、様々な還元剤が化粧品カーリング料として使用できるようになりました。そうした状況でも、チオグリコール酸塩類が大きなシェアを占めてはいるものの、徐々に化粧品カーリング料も傷みが少ないという特徴が支持され、パーマ剤の中で確固たる地歩を占めるようになりました。
しかし還元剤の種類が多くなって、還元剤ごとのかかりの特徴がわからないという声をよく聞くようになりました。そういった声に応えてヌースフィットが発案したのが、「還元剤パワーグラフ」です。
パーマ液の強さ、すなわちウェーブ効率は、業界の標準試験としてキルビー法を用いて表されます。キルビー法は、およそ20cmの毛束をキルビーロッドに巻きつけ、パーマ処理を行ない、その形状を測定するものです。キルビー法によって示されるウェーブ効率は、0~100%で表されますが、40%以下だと技術者からほとんどかからない、あるいはまったくかからないと言われるレベルです。
還元剤パワーグラフでは、チオグリコール酸換算濃度6%の還元剤のpHごとのウェーブ効率をグラフにしたもので、健康毛と損傷毛、室温と加温状態で測定した結果をプロットしてあります。昨今はサロンでもpHメーターを常備しているところも多く、このグラフを参考にすれば、各還元剤のpH、温度による挙動がわかり、製品選択や施術条件などを考える大きな指針となります。ヌースフイットではこのグラフをつくるために、膨大な実験を繰り返したそうです。もちろん髪質によっては、期待した結果が出ない場合もありますが、パーマ施術における、予測と結果の考察のための強力なツールになると思います。この還元剤パワーグラフは美容専門誌に掲載発表され、多くの技術者の方から「役に立った」と言われています。
但し、このデーターに基づいて施術するならば、データー提供元の「ヌースフイット製品」を対象に使用して下さい。理由として、近年化粧品登録のカーリング剤登場によって不可解な製品も多く出回る様になってきており、その詳細等を判断すると危険なものも見受けられる為、それらの製品に該当させて使用すると違う結果となり、事故にもつながりかねない為にご容赦願いたくお願い致します。※ ヌースフイットは、実験主義を会社の看板にしているメーカーで、出てくる数値などに正確性があり、業界をリードする推奨できるメーカーです。
チオグリコール酸、システアミン、スピエラ、GMTの還元剤パワーグラフ
縦軸:ウェーブ効率、横軸:pH(黒毛=健康毛、2B毛=14トーンにブリーチした毛髪)
ヌースフイット製品の詳しい情報は下記よりご覧ください。
酸性の還元剤を使うということについて
通常のアルカリ剤の入る還元剤は、よく考えると難しい!
なぜかというと薬のパワーは、酸性還元剤では、「髪の状態×還元剤のチカラ×熱のチカラ」 での方程式が、アルカリ還元剤になると 「髪の状態×還元剤のチカラ×熱のチカラ ×アルカリのチカラ 」 という方程式になっています。その為、アルカリ還元剤では薬の強弱を「薬剤のチオ換算(還元剤濃度)」だけでは、一言では言い切れません。
その為に難しくなっているので、実際にテストをして数多くの髪で結果をチェックした上で、初めて使える訳です。
しかし、その難しいアルカリのパワーへの影響度合いが、酸性還元剤では、全く無いわけですから簡単になり、単純に「 髪の状態×還元剤のチカラ×熱のチカラ 」だけです。これは、非常に分かりやすいのではないでしょうか?
勿論、ある程度のテストは必要ですが、アルカリ還元剤から比べたら容易に思えます。(アルカリが含まれたものは、まったく別と考えてください)
【最重要注意事項】
- チオ換算7%を超える薬剤は危険、絶対にやってはいけません。
- 髪のダメージ度合いによっては、ご存じの通りチオ換算6~7%の薬剤は強すぎます。
- 中には知識もないうえ適当にやってしまう方がいらっしゃいます。弱いからもっと強くしてやってみようと考え、とんでもない強い薬を作ってしまう安易な人もいます。強すぎれば髪に致命的なダメージを与えます。
- 「チオ換算」を知ることは、化粧品登録(コスメ系薬剤)薬剤を使用する方は、絶対に知っていなければならないものだと思います。
- スピエラ・GMTに関してですが、他の還元剤や他社のものは、内容成分等把握していませんので、何が含まれているかわかりません。よくご確認の上使用してください。
- 毛先の前処理等は、基本中の基本です。 (根元・毛先では毛髪が違います)
- 行った結果、事故になっても自己責任になりますのでしっかりと知識を持って行ってください。
最後になりますが、説明が難しい内容の為、より簡単に説明しようとする観点から不十分な説明もあるかと思います。その点、お詫び申し上げます。もし、ご不明な点等ありましたらお気軽にお問い合わせください。
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