チオグリコール酸システアミンとは : 美容師専門知識

※チオグリコール酸システアミンの情報量がWeb上とても少なかったので、少しでも参考になればと思い弊社情報をアップ致します。
弊社取扱い商材の一例

グラッツ CT (GRATS-CT) 200g 還元成分 : チオグリコール酸システアミン

チオグリコール酸システアミンとは (化粧品・カーリング剤)
表示名称 : チオグリコール酸システアミン (正式名称 システアミンチオグリコレート) pH4.0~6.0

チオグリコール酸システアミンは、チオグリコール酸とシステアミンが酸塩基反応(イオン結合)で出来た塩(中和物質)です。
チオグリコール酸の酸とシステアミンの塩基が結合した塩(塩化物)構造で水溶液中で解離して両方の還元作用を発揮します。
※ チオグリコール酸システアミン(正式名称:システアミンチオグリコレート)は、酸性成分であるチオグリコール酸(カルボキシル基:-COOH)と、アルカリ性成分であるシステアミン(アミノ基:-NH2)が「イオン結合(酸塩基反応)」することによって形成された塩(中和)。
【塩(イオン結合)としての構造表記】
[ HS-CH2-CH2-NH3+ ] [ HS-CH2-COO- ]
【結合の仕組み】
・チオグリコール酸のカルボキシル基が水素イオンを離脱(-COO-)
・システアミンのアミノ基が水素イオンを受容(-NH3+)
電気的な引き合い(イオン結合)により「チオグリコール酸システアミン」という1つの塩を形成します。
※塩とは、プラスの電気を帯びた陽イオンと、マイナスの電気を帯びた陰イオンが結びついてできた化合物の総称

システアミン部位(陽イオン):HS-CH2-CH2-NH3+ ⊕ チオグリコール酸部位(陰イオン):HS-CH2-COO-このイオン結合で出来上がった物質が、【チオグリコール酸システアミン】正式名称 : システアミンチオグリコレートとなります。
組み合わさった分子量は、システアミン77.15+チオグリコール酸92.12=169.27と大きくなります。
【分子量の比較】
・システアミン単体:約 77.15
・チオグリコール酸単体:約 92.12
・チオグリコール酸システアミン(塩):約 169.27
なぜ分子量が大きくなっても髪に浸透するのか?
分子量が大きくなると「髪への浸透性が落ちるのでは?」と疑問に感じられるかもしれませんが、ここがこの成分の特殊なポイントです。
【浸透性のメカニズム】
チオグリコール酸システアミンは固体の化合物ではなく、水に溶かしてパーマ液やラッシュリフト剤(水溶液)として使用されます。塩(分子量 約169)として作られていますが、薬剤(水溶液)として水に溶けると、水中で解離して元のシステアミン陽イオン(分子量 約77)とチオグリコール酸陰イオン(分子量 約92)に分かれます。
1.水溶液中での電離(解離)
イオン結合で形成された塩は、水に溶けると水溶液中で再び「システアミン陽イオン」と「チオグリコール酸陰イオン」に電離(解離)します。
2.個別に作用・浸透する
髪に塗布された段階では、分子量 169 の塊として作用するのではなく、分子量 約77 のシステアミン分子と、分子量 約92 のチオグリコール酸分子として独立して動くことができます。
そのため、「塩にすることで液中の安定性や低刺激性・低匂い化を実現しつつ、施術時には分子量の小ささを活かして髪内部へスムーズに浸透する」というハイブリッドな特性を発揮します。そのため、分子量が大きくなって髪に入りにくくなることはなく、システアミン特有の「小さな分子量による高浸透性」を維持したまま作用します。

【チオグリコール酸システアミンが「安定・低刺激・低臭」になるメカニズム】
- 低臭化の仕組み(イオン化による不揮発化)
においとして空気中に漂うのは「中性の遊離分子」です。
システアミンが塩を形成して「イオン(電荷を帯びた状態)」になると、水と強力に結びついて空気中に飛び出さなくなる(揮発しない)ため、特有の強い硫黄臭・アミン臭が劇的に抑えられます。システアミン特有の強い残香(特有の硫黄臭)やチオグリコール酸の刺激臭が、塩の形態になることで比較的抑えられます。※簡単に言えば気化しない。 - 低刺激性の仕組み(自律的なpH緩衝作用)
酸(チオグリコール酸)と塩基(システアミン)がペアになっているため、過度なアルカリ剤を使わずに中性〜弱酸性域で機能します。
アルカリによる毛髪・皮膚の膨潤ダメージを回避できるほか、イオン化した成分は皮膚の角質層を通過しにくいため刺激が軽減されます。 - 液中安定性の仕組み(酸化防止と揮発防止)
単体では空気中の酸素で酸化分解しやすいシステアミンが、塩を形成することで電子構造が安定化し、品質劣化(酸化)を防ぎます。また成分が揮発して逃げないため、薬剤の濃度が長期間保たれます。

チオグリコール酸システアミン「最大のポイント」

チオグリコール酸システアミン(システアミンチオグリコレート)が持つ最大の特徴は、「大きさも極性も異なる2種類の還元イオンが、毛髪内部のそれぞれ異なる領域(F還元領域・M還元領域)に同時にアプローチできる」という点にあります。(ハイブリットな還元)
※F還元・M還元「FMCB理論」については、コチラをご覧ください。
【チオグリコール酸システアミンの独自の還元作用】
- M還元(マトリックス還元)領域とF還元(フィブリル還元)領域への「ダブル還元」
毛髪内部のS-S結合が存在する領域(親水性のM還元域、疎水性のF還元域)に対して同時に働きかけます。
・チオグリコール酸イオン(親水性):主にM還元領域を切断
・システアミンイオン(浸透性・疎水性):主にF還元領域を切断 ※正確にはどちらにもF・M還元はありますが、どちらに大きく傾いているかで、親水性・疎水性に区別されます。
上記の2系統の還元イオンが独立して動くため、毛髪内部をムラなく還元できます。1つの薬剤(チオグリコール酸システアミン)で毛髪内部の異なる2つのF還元域・M還元域のS-S結合を還元できます。 - ノンアルカリ(低膨潤)での深部浸透
システアミンの持つ「小さな分子量」と「毛髪への吸着性(プラスの電荷)」が先導役となり、アルカリ剤で髪を膨潤させなくても、中性域のまま毛髪深部までスムーズに浸透・還元します。チオグリコール酸システアミンは、システアミンの「小さな分子量」と「毛髪への吸着性(プラスの電荷)」を利用して浸透の先導役(キャリアー)のような働きをします。これにより、アルカリで無理に髪を膨らませなくても、中性域のまま毛髪の深部まで還元成分を届けることができます。 - 「弾力」と「しなやかさ」の両立
システアミン特有の柔らかい質感に加え、チオグリコール酸の「しっかりとしたカール・ストレート形成力」が加わるため、ダメージを抑えつつダレにくいリッジ(ウェーブ)を形成します。
チオグリコール酸システアミンは、酸性のチオグリコール酸とアルカリ性のシステアミンの2つの還元剤を結合させた中性域の還元剤で、1つの分子でチオグリコール酸とシステアミンの2つのSH(還元基)持っています。
チオグリコール酸とシステアミンの2つのSH(還元基)を持つことでのメリット
チオグリコール酸とシステアミンの「2つの異なる特性を持つSH基(メルカプト基)」が同時に存在することには、毛髪化学的に非常に大きなメリットがあります。
単一の還元剤のSH基と異なり、「反応速度(即効性)の差」と「電気的性質(電荷)の差」という2つの軸で相乗効果が生まれます。
- 反応速度のタイムラグによる「持続的でムラのない還元」
SH基がS-S結合を切断する際、その反応しやすさは分子の構造や周りの環境によって異なります。
システアミンのSH基(速効型)
分子量が非常に小さいため毛髪内部へ素早く拡散し、素早くS-S結合へアプローチして切断をスタートさせます。
チオグリコール酸のSH基(じっくり・確実型)
システアミンよりわずかに大きく、親水性環境で確実に強力な還元力を発揮します。
この2つのSH基が同時に存在することで、施術直後から時間経過に伴って段階的かつ持続的に還元反応が進行します。これにより、局所的な過還元(かかんげん:還元しすぎて髪がテロテロになる現象)を防ぎつつ、全体をムラなく均一に還元できます。
- プラスとマイナスの両方の電荷を持つSH基による「立体的な還元」
毛髪内部のタンパク質は、部位によってプラスに帯電しやすい場所とマイナスに帯電しやすい場所が存在します。
システアミン由来のSH基:アミノ基を持つためプラス(陽イオン)の性質を帯びます。
チオグリコール酸由来のSH基:カルボキシル基を持つためマイナス(陰イオン)の性質を帯びます。
イオン結合が解離した水溶液中では、プラスのSH基とマイナスのSH基がそれぞれ引き寄せられる毛髪内部の部位へ自然と誘導されます。その結果、毛髪内部の偏った部位だけでなく、あらゆる角度・環境にあるS-S結合に対して立体的にSH基がアクセスできるようになります。
- 還元効率の向上(少ないアプローチで効率よく切断)
同じ濃度の還元剤を使う場合でも、1種類のSH基だけだと毛髪内の「得意な環境のS-S結合」ばかりを優先して切断してしまいます。
特性の異なる2種類のSH基が共存することで、毛髪内のさまざまな環境下にあるS-S結合をキャッチできるため、全体の薬剤濃度(SH基の絶対量)を低く抑えても高い還元効率(カール・ストレート形成力)が得られるというメリットがあります。
【2つの異なるSH基(還元基)を持つことの特段のメリット・まとめ】
- 時間差による「段階的・均一な還元」
分子が小さく素早く動くシステアミンのSH基と、確実に作用するチオグリコール酸のSH基がタイムラグを持って働くため、急激な過還元を起こさず、時間経過とともにムラなく均一に還元が進行します。 - 正・負の電荷による「立体的なS-S結合へのアプローチ」
システアミン由来(陽イオン性)とチオグリコール酸由来(陰イオン性)の2種類のSH基が存在するため、毛髪内部の電荷環境に左右されず、あらゆる部位のS-S結合へ効率よく引き寄せられて切断します。 - 薬剤濃度の低減(高効率還元)
得意分野が異なる2つのSH基が網羅的に働くため、成分全体の濃度(SH基の量)を過剰に高くしなくても、十分な還元力とウェーブ・ストレート形成力を発揮できます。

チオグリコール酸とシステアミンの2つのSH(還元基)を持つことから「チオ換算%」は通常より少し下げる必要があります。
結論から申し上げますと、チオグリコール酸システアミンを使用する場合、「従来の計算式で算出したチオ換算(TG換算)%」の設定目標(数値目安)は通常より少し低く抑える必要があります。
その理由と現場での考え方を解説
- なぜチオ換算目安を少し低くする必要があるのか?
従来の「チオ換算(TG換算)」は、「1つの分子の中にSH基(還元基)が1つある」という前提で計算されています。
しかし、チオグリコール酸システアミンの場合 分子量(約 169.27)に対して、1つの塩分子の中にSH基が2つ含まれています。
そのため、単に分子量比だけで計算してしまうと、「SH基が2つ存在することによる還元力」が計算に反映されません。
チオグリコール酸システアミンの場合、「チオ換算1.088倍で計算」
SH基(チオール基)の当量で再計算するチオグリコール酸システアミンの換算係数を1.088として計算します。(チオグリコール酸とほぼ同等の重量比で1.08倍の還元力がある)
1.088という計算は、「チオグリコール酸システアミン(重さ)1g を混ぜたとき、チオグリコール酸(チオ)何g分に相当するパワー(還元力)があるか?」 を求めるための「係数」を表しています。
結論から言うと、「チオグリコール酸システアミンの配合量(g)に 1.088 を掛けると、本当のチオ換算(%)がひと目で分かる」 という式です。紐解くと、以下のようになります。
チオグリコール酸システアミンは、分子量が 約169.27 です。
その中に含まれる「チオグリコール酸の部分(分子量 約92.12)」だけの重さの割合を計算すると、以下のようになります。
92.12÷169.27=0.544
これは「もしSH基(還元基)が1個しかなかった場合、チオグリコール酸システアミン 1g は、チオ 0.544g 分の重さしかないですよ」という換算です。
しかし、チオグリコール酸システアミンには「システアミン側のSH基」と「チオグリコール酸側のSH基」の合計2つの還元基(SH基)が存在します。
通常の還元剤(チオやシステアミン単体):1分子の中に SH基が 1個
チオグリコール酸システアミン:1分子の中に SH基が 2個
つまり、S-S結合を切る手(SH基)が2つあるため、還元するパワーが単純に2倍になります。
この「パワー2倍」を反映させるために×2にします。
重さの比率(0.544)に、パワーの倍率(2倍)を掛け合わせます。
0.544×2倍=1.088
この「1.088」という数値は、「チオグリコール酸システアミンは、同じ重さのチオグリコール酸(単体)よりも約1.088倍(約1.09倍)還元力が強い」ということを意味しています。
薬剤の中に「チオグリコール酸システアミンを 3%(3g)」配合したとします。
従来の単純計算(SH基を1個と計算した場合)3%×0.544=1.632
「チオ換算 1.63% だから弱くて安心だな」と勘違いしてしまいます。
正しい計算(1.088 を掛ける)3%×1.088=3.264%(「実質はチオ換算 3.26% 相当のパワーがある!」と正確に把握できる
【まとめ・「0.544 × 2 = 1.088」の分かりやすい解説】
この式は「チオグリコール酸システアミンが、チオグリコール酸の何倍の還元力を持っているか」を表す換算係数です。
・「0.544」:重さの比率
チオグリコール酸システアミンの分子量(約169)のうち、チオグリコール酸の部分(約92)が占める重さの割合(92 ÷ 169 ≒ 0.544)。
・「× 2」:SH基(還元手)が2個ある効果
1つの塩分子の中に還元基(SH基)が2つ存在するため、還元パワーが2倍になります。
・「1.088」:最終的な実質換算係数
両者を掛け合わせた「1.088」が本当の強さの指標です。
【まとめ】
「チオグリコール酸システアミンの配合量(%)× 1.088 = 実質的なチオ換算(%)」
同じ重さで比較した場合、チオグリコール酸単体よりも約1.09倍強い還元力を持っていると覚えておくと安全です。
【現場での目安】
一般的なチオ換算値「7%」で作ると → 実質「7.616%相当」になり過還元になり注意が必要です。
■ ここまでの情報は弊社が調べてた、あくまで数字上のことで現場での検証は済んでおりません。その為、あくまで参考程度に捉えて頂き、今後、様々な情報が入り次第情報として提供したいと思います。
弊社でも確認が出来ていない点として「チオグリコール酸システアミンは中性域で疎水還元も親水還元もバランスよく還元される。しかし、pHが酸性域やアルカリ域の傾きによって、親水性還元、疎水性還元のどちらかに傾くので、用途に応じてpHをコントロールして使用が出来る還元剤」という点についてもう少し調べる必要があると思っております。また、別物ですが、グラッツで使用される「システアミン」は水溶性のピュアシステアミンを使用しているので、毛髪内に残留性が低いとのことでした。
※弊社で調べた結果ですが、誤記などありましたらご容赦下さい。
▢ あくまで弊社の見解結論
弊社で様々なテストをしたいと考えておりますが、現状人手不足もありなかなか進んでおりません。ただ、同じ疎水+親水部分の還元を考えた時に「GMTとスビエラ」の方が施術結果を踏まえると良いように思えます。なぜなら、毛髪化学は別として、結果的に求めるものは「傷めない」というほかに、「毛髪の質感・艶」などを追い求めることにあるからです。今後、チオグリコール酸システアミンも改良が加えられ、より優れたものになってくるかと思いますが、現状としてはやはり「GMT∔スビエラ」のハイブリットを推奨致します。
今後、試して見たい事として、ヌースフイットの無重力パーマの元となる「パームゼロ」との組み合わせがとても気になります。結果が出ましたら、これもお知らせ致します。以上、少しでも参考になって頂ければ幸いです。

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